第十四話①
通りの人たちは皆、活気に溢れている。
祭りの準備を誰1人として苦痛には感じてはいないようで、まるで始めて開催するかのように、皆は新鮮な笑顔で作業を行っている。
「本当に、毎週行われる祭りなんだよな?」
「そうみたいよ。確か週に4日はあるって言ってたかしら」
「そうか、1週間のうちに祭りがない日の方が少ないんだな……」
それなのにこの活気とは、余程この通りに住む人たちはお菓子と祭りが好きで、それでいてこの場所を愛しているのだなと感じた。
それ程までに愛されている事は素直にすごい事だなと感じ、少しばかりこの通りの存在に感心を抱き始めていた。
すると放送機器から何やら音が聞こえ始めた。
どうやら18時になったみたいだ。
『皆様方、18時となりました。準備は出来ていますか』
上がりに上がったテンションをグッと抑えているかのようなパンプキンの声が放送で流れ始める。
それに応えるように、通りのもの達は盛大に湧き上がり出した。
パンプキンを慕う声と祭りを楽しみだと叫ぶ子どもたち、もう夕方だというのに昼間のようなご機嫌具合で皆は笑顔を向けている。
『それでは皆様方…【パンプキン祭り】の開催です!! たらふくお菓子を食べて、甘いひと時を凄すとしましよう!!!』
遂に限界だと上がりきった感情をパンプキンが解放したその瞬間、通りからは音楽が流れ始めた。
辺りを見てみると、屋根や屋台の上など至る所に音楽を手に持った人たちが演奏を奏でており、この通り全てを音色で包み込んでいた。
ケルト音楽のような楽しく愉快なそのメロディーはとても効き心地が良く、祭りに乗り気ではなかった俺でさえも楽しい気分にさせられてしまう。
「ほら、行くわよマヤト! お菓子が売り切れちゃうわ!」
柄にも無く舞い上がり、俺の手を引いてアカリは祭りの会場へ急いだ。
お菓子が食べたくて仕方がないのか、彼女もこの音楽で気分をあげたのかわからないが、機嫌が良いに越した事はない為、何も言わずに俺は着いて行く。
その後直ぐに祭り会場へ足を踏まれると、途端に甘い香りを体全身にで感じ取った。
チョコレートの海に流されているかのような、甘美で蕩けてしまいそうになる程の幸せな匂いに、何とも不思議な気分にさせられる。
祭り会場は通りの中央で行われており、そこには人がごった返していた。
その道の両端を埋め尽くす程屋台が並べられていて、それぞれ異なったお菓子を販売している。
ただこの道は通りの中でも広い場所の為、これだけの数人がいてもあまり窮屈には感じない。
屋台には綿菓子やリンゴ飴など祭りの定番のものや、クッキーやキャンディなど、この通りらしいお菓子も並んでいる。
アカリは目移りしてしまうと言うように、そこらの店をじっと見つめる。
普段は気の強い奴だといった印象だが、この時はまるで純粋無垢な少女のように瞳を輝かせていた。