第十三話③
「あれ?もう全て使われたのですか?」
元の場所に両替しに行くと、先程の定員さんがまだ受付をしており、驚いた顔でそのようなことを言われてしまった。
まだ両替してから3時間も経っていないのだ。
使い切るにしてはあまりにも早く、そう思われても仕方がないことだろう。
俺も定員さんと同じ気持ちだと思いながら、アカリと共に有金全てを両替して、それを俺とアカリの2人で分け合いその場を立ち去った。
「いいか、もう俺はお前に、一切金を出してはやらないからな。くれぐれも金の使い方には気をつけることだ」
「わかってるわよそんな事、さっきは偶然あんな事になってしまったの、私にしては珍しい事だわ。良かったわね。珍しい私の姿が見れて」
最初から最後までずっと憎たらしいセリフを吐いた後、俺の前を歩いて祭りの会場まで進み始めた。
歩幅を合わせるつもりもないのかと腹が立ち、アカリを抜かすように足早に歩いて行くと、それに負けじとアカリも歩く速さを上げ始める。
「何のつもりだ?疲れるだろ、面倒な真似はするな」
「何のこと?私はただ、早く祭りに行きたいだけ何だけど?」
「まだ18時まで時間がある。早く着いたところで仕方がないだろ」
「それもそうね。だったらもう少しゆっくり歩いてくれる?」
「それもそうだな。そうしよう」
そう言いながらも俺たちは歩く速度を弱める事はなく進み続け、息を切らしながら会場に辿り着いた。
屋台などは並んでいるがそれらはまだ準備中で、邪魔になってしまうといった判断をアカリと共に下して、少しその場から離れた場所で俺たちは休む事にした。
「全く、お前のせいで無駄な体力を使ってしまった」
「私のせいだって言うの?貴方のせいだしょ?」
俺たちはそんな言い合いをしながらも、途中からは何も話さなくなってしまった。
急に体力を使ったせいで、一気に疲れがきてしまったのだ。
今から祭りだというのに何をしているのかと、自分の馬鹿さ具合に呆れ始めた途端の事、何やら放送が始まった。
「あ、あー。マイクチェックです。ん、ん…えー、ただ今18時5分前になります。皆様準備は整いましたか?もう直ぐ、始まります」
そんな音声と同時に放送は途切れて、通りは少し騒がしくなり始めた。
いよいよ祭りが始まろうとしているらしい。
頻繁に行われているものだと聞いているが、案外しっかりと行うのだなと感心しながら、祭りが行われる会場をじっと見つめる。




