第十二話①
私は今、ハロウィン通りとか言った、ふざけた場所にやってきていた。
ここ最近冒険を始めたわけだが、これからもこう言ったおかしな場所に向かう可能性があると考えると、それだけで気疲れしてしまう。
ただでそんな事を考えて気分が落ち込んでいるというのに、私は今猛烈にお腹が空いていて、気分のみならず体力も限界を迎えようとしていた。
朝からご飯も食べずにただひたすらに歩いていたのが原因だろう。
先程マヤトとも別行動になったわけだし、自分の好きな料理屋さんへ行こうと思い、私は通りをふらふらと歩いていた。
何処か自分の食欲を満たしてくれる場所はないかと飲食店を探してみるが、今一つ入る気が起こらない店ばかりだ。
というのも、この通りの飲食店には全てお菓子のマークが描かれており、店内からは甘い香りが漂ってくるのだ。
もしかしたら、この通りの飲食店は全てお菓子屋さんなのかもしれない。
何もお菓子が嫌いなわけではないのだが、今の私は
主食のようなものを口にしたいと思っている。
お菓子などは、食後にいただきたい。
だがいくら探したところで自分の望むような店には巡り合う事が出来ず、私は仕方なく自身の嗅覚で、最もいい匂いだと判断した飲食店へと足を運んだ。
その店の外装は一見綺麗には見えないが、よく見てみるとあえて古いように見せてあるだけのデザインのようで、見た目による印象とは違い、清潔感がある店だと言うことがわかった。
恐らくこの通りのイメージと外装を合わせているのだろう。
わざわざそこまでする必要があるのかと不思議に思いながらも、私は木造の扉を開ける。
外から見てもわかっていた事だが、店内はテーブル席が2つと4人が触れるほどのカウンター席があるくらいで然程広くはなく、内装は飲食店というよりも、お菓子屋さんのようになっている。
ハロウィンの際によく見かけるお菓子のような、お化けや一つ目のモンスターなどを模した商品が、カウンターに所狭しと並んでいる。
インテリアも可愛らしいお化けのマグカップやモンスターのランタンなどが置かれており、子供などが楽しめるような場所となっている。
そんな中々に愉快な店内だが、夕飯前だからかお客さんの姿は1人も見られず、店主さんは私を見るなり直ぐにこちらへとやってきた。
「あらあらこんな時間に珍しいわね」
「そうですね。もう直ぐ晩御飯の時間ですもんね」
「それもあるけどね。この通りは18時からパンプキン祭りが始まるでしょ?皆んなそこで食事を済ませるのよ」
「パンプキン祭りですか?」
聞いたことのない単語に首を傾げると、店主さんは私がこの通りに来たばかりだと気がついてくれたのか、その祭りについて詳しく話してくれた。
「毎週月、水、金土日曜日の午後6時に行われるの。色んなお店がお菓子を販売して、皆んなでそれを踊ったりしながら食べるのよ。一度見てみて、面白いわよ」
「かなりの頻度でやってるんですね…じゃあ行ってみようと思います。…ただそれはそれとして、私は今猛烈にお腹が空いていますの…出来れば食事を今直ぐに食べたいのですが…」
「あらそうなの?ならどうぞ席に座って、誰もいないしテーブル席に座っていいからね」
そう言いながら店裏に店主さんが戻ろうとしたところで、私はある事を聞くために止めに入る。
「ごめんなさい。念の為この通貨が使用できるのかお聞きしたいのですが…」
「えー勿論使えるわよ。値段表もその通貨での記載になってるから安心してね」
ひとまず使えて良かったと思いつつも、まさか本当に使えるとはといった感想の方が大きく出てしまう。