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第一話④

「お願いがあるんだマヤト!!!」

「何だ突然?報酬なら均等に分配しただろ?」


 ある大型モンスターを討伐した直後、パーティメンバー3人が、突如姿勢を正しながら俺の前に立った。


 このパーティのリーダーであり勇者の男を筆頭に、その横に回復役であるシスター、そして前衛職の女騎士が、何やら真剣な目を俺に向けている。


 今まで経験した事がない状況を不思議そうに見つめながら、俺は荷物の整理をしていた。

 

 こいつらがそもそも俺に対して意見してくる事自体が意外だった。今までそのような事は一度としてなかったからだ。


 それもそのはず、俺は皆から不満が出ないように行動してきた。


 何か名の知れたモンスターを討伐した際には、パーティ全体の手柄にし、報酬も今回のように皆で均等に分けてきた。

 個人的に入手したレアアイテムを、定期的に皆に配るなどもし出来たことがある。

 つまりは、とても素晴らしい対応をしてきたんだ。


「それがね……ヤトくん。言いにくいんだけど」

「別にいい、何でも言ってくれ」


 早く話を終わらせて、自分のやるべき事をしたい俺は、少し雑な返事をする。


「……このパーティから、抜けて欲しいんだ!!」


 俺はその発言に気を取られてしまって手が滑り、整理していた荷物を全てひっくり返してしまう。


「……は?」


 感想としてはこの一文字しかない。

 前世でこのジャンルも見た事はある。

 所謂『追放ザマァ』と呼ばれるジャンルだ。

 

 無能というレッテルを貼られた、本来実力のある主人公が、あろう事かパーティから追放される。

 そしてパーティから主人公を追い出してからというもの、パーティは主人公がいないと何も出来ない事に気がつき後悔する。

 その間主人公は本当の仲間を見つけて楽しく過ごし、苦労している元パーティ仲間を嘲笑うと言ったものだ。


 だが待ってほしい、このジャンルの前提条件は、パーティで無能扱いされるという事、俺はそんな扱いをされる筈がないんだ。

 誰よりも活躍し、成果を上げ、皆を引っ張ってきた。

 それなのに何だこの仕打ちは。


「理由を話して欲しい」


 俺は冷静を装いながら問いかけると、パーティメンバー、言いづらそうにしながらも答えた。


「楽しくないんだよ!!お前との冒険は!!」

「私たちの為に頑張ってくれるのは嬉しい!!だけど貴方は少し強すぎる!!」

「自己肯定感が、ゼロになってしまいます!!自分なんて必要ないんだって思いながら過ごすのは、もう嫌なんです!!」


 皆の真剣な態度を目の当たりにし、俺がこのパーティでこのままやっていく事は、困難である事を悟った。


「……そうか。わかった」


 俺はそう言ってその場から乱雑に荷物をまとめて立ち去る。


 皆はこちらの態度を見て、少し恐れた表情をしていたが、別に俺は怒っているわけではない。

 ただ、何となく相手の言いたい事もわかる為、仕方がないと、理解はしている。


 それは前世でライトノベルを読む際、強すぎる主人公を見ていて、たまに思う感情と似ていた。


「……こいつ、本当に戦いを楽しめているのか?」そう思った事が何度かある。


 実際、最強の力を手に入れた現在、俺自身はとても楽しんでいる。

 だが周りの人間からしてみれば、そうはいかないのだろう。


 ただひたすらに俺がモンスターを倒す様を見せられ続け、偽りの成果をあげて、気を遣われるように報酬を分けてもらう。

 考えてみればそうじゃないか、こんな行為、プライドが傷つけられるだけだ。


 あいつらはきっと、もっと苦労しながら協力し、強大な悪を撃つ。そんな心踊る冒険がしたかったのだろう。

 

 不満が全くないと言えば嘘になるが、仕方のない事だ。


 これからは1人で、いや、俺には婚約相手の王女様がいるじゃないか。

 あの子と2人で旅に出よう。それもきっと楽しい筈だ。


 ――

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