第十一話④
これは感動的で、泣ける話なのだろう。
流石異世界というべきか、彼は物語の主人公のように、この通りを守ることを自分と彼女の意思だと口にした。
もし仮にこの通りを襲うものが現れれば、彼は自分の身を犠牲にしてでも立ち向かうのだろう。
そんなありきたりな物語のような展開と、彼の存在そのものに、俺はえらく興味を持ち始めていた。
「こう言った場所で雑談などは、あまりするべきではないでしょう。私の家へ案内しますので、ついてきて下さい」
そう言ってパンプキンは歩き始めたのだが、あろう事か森の方へと足を進めていく。
「ちょっと待て、その先は森だぞ?行き止まりではないのか?」
「本来はそうですね。これ以上先へは進まないように、通りの方には言ってあります」
そう言いながらも、奴は森の中へズケズケと足を進めていく。
俺も慌てて着いて行ったが、この選択は間違いだったかもしれない。
そこらじゅうに生えた木の枝や雑草が服に何度も擦り、服が段々と汚れていく。
俺は無理に進まないようにしているが、あいつのように無理に進むと、服に傷がついてしまいそうになる。
「その服、大事なものじゃなかったのか?」
「えぇ、大事ですよ」
「ならもう少し丁寧に先へ進んだらどうだ?」
「服が汚れるのは仕方がないことです。それが嫌なら家の戸棚にしまっておく他ない」
そういう話をしているのではないのだが、どうやら相手は少しズレたところがあるみたいだ。
「見えてきましたよ。あ、それからこの先は地面に気を付けてください。怪我なんてしたくないでしょうし」
そう言いながら相手は森を抜けて、俺を待つ事なく先へ先へと進んでいく。
俺は先程の相手の言葉を頭に入れたまま先へと進み、ようやく森を抜けたところで地面を確認した。
するとそこには、幾つもの刀や槍などの武器が投げ捨ててあるかのように散乱してあった。
確かにこれには気をつけなければいけないなと思いつつも、それよりも何故こんなものがここに置いてあるのかと言った考えに移ってしまった。
俺はその武器の山を慎重に超えていき、ようやく相手の元に辿り着く。
これだけでも非常に疲れてしまった。出来ることならもうここには着たくない。
「随分と掛かりましたね。何かありましたか?」
「あっただろ。あの武器の山は一体何だ?」
「貴方は知る必要がありません…それよりもほら、ご覧下さい!!これこそが私の家にして拠点です!!」
そう言って相手は、自慢するかのようにそこにあった自身の家を紹介してきた。
剥がれ落ちそうな壁に、腐り切った木材で出来た外装、全体は真っ黒になっていてとても不気味だ。
もっと言い方を悪くすれば、あまりにもボロい。
幽霊屋敷のようになってしまっている。
俺は今からこれに入らなければならないのかと、綺麗好きな俺としては少し気が引けてしまい、何とも微妙なリアクションを取ってしまう。
「……何とも個性的な家だな」
「そうでしょう。何といってもMrs.パンプキンとの思い出の家ですから…いやぁ懐かしい、私が彼女と始めて出会ったのもここでした……」
物思いにふけている相手には申し訳ないが、やはり入りたくない。
どうにかする策はないかと頭を回らせて、ここで俺はある名案を思いついた。
「あーそうだすまない。実はこの通りに俺と共にきた仲間がいてな。そいつを回収するのを忘れていた」
「おや、そうなのですか?その方は今通りの方に?」
「あーそうなんだ。実はこの世界について知りたいのも彼女でな。俺ではなく、彼女に勉強を教えてやってくれないか」
これでアイツにこの件は任せることが出来るだろう。
そして俺は、この家に入らずに済む。完璧な流れへと持っていけそうだ。




