第十一話②
俺は暫くそこを歩きながら、次に進む道を考えていた。
行きではこの通りの長がいるような建物は見当たらなかったことを考えると、別の道を辿る方がいいのだろう。
次は下り坂だからまだいいが、そこで見当たらなければまたこの坂を上ることになるのかと、俺は大きくため息を吐いた。
墓の周りを歩いていることもあり、気分があまり上がらない。腹も減ったし疲れもした。
そんな風にあらゆる愚痴が頭の中を駆け回っていたのだが、突如としてその思考はピタリと止まってしまう。
それは視界に映り込んだあるものが原因となっており、俺は事実を確認する為にそれをじっと見つめて、何が起こっているのか考えた。
けれど理解が追いつく事はなく、遂に言葉が溢れてしまう。
「……どういうことだ」
そこには大きな墓が建てられてあった。
他と比べても2回り程大きいそれは、今もなお丁寧に手入れがされていて、大事に扱われていることがわかる。
俺はそこに書いてある文字をじっと眺めた。
『Mrs.パンプキン。ここに眠る』
つまりはそういうことなのだろう。
彼女は既に亡くなっている。
まさかこんな展開になるとは考えてすらいなかった俺は、呆気に取られてしまった。
だってそうだろ。バーグから話を聞いて、その場所を訪れると相手は既に亡くなっており、そこには墓が建てられている。そんなこと、想像できるはずがない。
墓の傷や経年劣化を見るに、最近亡くなったわけでないことがわかる。
恐らく数年前に亡くなったのだろう。
先程Mrs.パンプキンの居場所を教えてくれたあのご老人は「あの場所で休んでいるはずだ」と言っていたが、これはそのままの意味ではなく、既に亡くなっていることを今していたのだなとようやく気がついた。
あの方も、まさかMrs.パンプキンが未だ生きていると思って、俺が聞いてきたとは思っていなかったのだろう。
あの場面で話がすれ違っている事に気がつければ良かったんだ。そうすれば、このように無駄足を踏まずに済んだのだ。
俺は立ち上がり、その場を離れようと後ろを振り向き歩き始めた。
「そこで何をしているのかな?」
後ろを振り向いた途端の事、先程誰もいなかった場所に何者かがじっと立っていたのだ。
大きなカボチャの被り物を頭に被った謎のそれは、俺を観察するかのように、見つめてくる。




