第十話③
「おいアカリ、手持ちはいくらある?ここにどれほど滞在するかはわからないが、ひとまず半分ほど両替しておきたい」
「どうして私に聞くのよ。先ずは自分の分を出せばいいでしょ?」
「お前のせいで残り2万ゴールドしかないんだ。忘れたのか?」
「何だ、2万ゴールドあるじゃない」
「悪魔かお前は」
結局アカリが5万ゴールド、そして俺は1万ゴールド出して、お互い3万ゴールドずつ持つ事になった。
「私の優しさよ。感謝しなさい」
「……あーそうだなありがとう」
俺は感情を一切込める事なくそう口にした。
「えーと合計6万ゴールド分ですね。少々お待ちください」
相手はそのまま裏へとはけていき、俺たちはその間、窓から見える範囲で通りを見渡す。
「バーグによればこの通りにMrs.パンプキンという奴がいるんだよな?それらしき家はあるか?」
「そうね…この通りの長というくらいだから、分かりやすい場所にある気もするけど、ここからじゃわからないわね」
すると裏から何かを抱えて、両替の終えた受付が戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがハロウィン通りでの通貨になります」
そう言って何故か相手はお菓子をテーブルの上に並べる。
そのどれもがとても美味しそうで、食欲がそそるがそうじゃない。相手は今確実に対応を間違っている。
「……俺は菓子を購入したつもりはなくてだな。通貨を両替して欲しかったのだが」
「えー、ですからこちらがうちで取り扱っている通貨、『スウィート』になります」
「スウィート……そのままね」
俺たちは相手がただおちゃらけているのかとも考えたが、相手のふざけている素振りを見せない様を見て、これは事実なのかと混乱してしまう。
「えーとだな……では、どの菓子がどれ程の価値に値するのかを知りたい」
「はい。この小さなクッキー、これが銅貨と同じ扱いになり、キャンディが銀貨と同等になります。そしてこの金色のチョコレートが、金貨と同等の価値になります」
チョコレートは金色の包み紙で包まれており、キャンディは銀色の袋に入れられて、そしてクッキーはただの小さな紙袋に入れられていた。
「そうか……何処までが本当なんだ?」
アカリは遂に聞くのかと、俺に鋭い視線を送ってくる。
相手は直ぐに返答する事なく、少し溜めてから応えた。
「それが全て事実なのですよ。嘘見たいかとは思いますが」
――
俺たちは動揺したまま店を出た。
色々と聞きたいことがあったが、何だか起きる事の全てが理解出来ず、一旦話を整理したくなったのだ。
「えーと、こんな誰でも偽装出来そうなものが通貨って事だったよな? 大丈夫なのか、この通りは?」
「一応特殊な光を当てれば本物か偽物かの区別がつくようになってるとは言ってたけど……それでも凄いわね。最悪自己責任で食べてもいいとまで言っていたわよ」