第十話②
通りのちょうど中心にある時計台、そこに設置された大きな鐘が突如として動き始めて、まだ門にいる俺たちの体すらも揺らす程の音を鳴らし始める。
本来鐘の音などに向ける感想など特に持たないのだが、この鐘には何か特別なものを感じてしまう。
何故かこの鐘の音が、何かが始まるような合図に感じてしまい、不思議と期待感などが湧き上がり始めていた。
「皆々様!! 15時をお知らせします!! 15時と言えばおやつの時間!! ライトアップをお願い致します!!」
何処からともなく聞こえてきたそんな放送を合図に、先程まで薄暗かった通りの建物たちは、オレンジ色の光を放ち始めて、恐ろしい雰囲気は突如として収まっていく。
「これがパンプキン通りだったとは予想外だな……町とは言わないまでも、村ほどの大きさはあるぞ」
「そうね。通りというにしてはあまりに大きすぎるわ。」
「まぁお二人とも、そんな難しく考えないでひとまず入って下さいよ。真っ直ぐ行ったところにある集会所があるからそこに向かいな。気になる事はそこで教えてくれると思うからさ」
俺たちは戸惑いながらも通りへと足を踏み入れた。
通りの中は何だかとても甘い香りが漂っていて、この通り全体がお菓子で出来ているのではないかと思う程だ。
腹の減っていた俺たちにとってそれは苦痛でしかなく、早く飯にありつきたいと言った欲望が促進され続けた。
「集会所にもご飯は置いてあるのかしら…もう限界よ」
「あったとしてもこの匂いからして、あるものは全てお菓子かもしれないぞ。俺としてはもっと油っ気のあるものが食べたいのだがな」
「私はお菓子でもいいわ。甘いものは好きだしね」
「それは本当か? そうは見えないが…」
「……腹を満たせたら何でもいいって話よ。早く行くわよ」
俺たちは傾斜になっている道を進んでいき、ようやく集会所らしき場所へと辿り着いた。
やはりこの建物の中を照らしているのはオレンジ色の光で、窓からその光が溢れ出ていた。
「いらっしゃいませ!何用でしょうか?」
店のドアを開けると、忙しそうに女性が何かを運んでいる姿が見えた。
運んでいる物は、お菓子だろうか?
クッキーやらキャンディやら、お菓子の定番となるものが箱一杯に詰まっている。
「ここについて聞きたいことがあるんだ」
「そして何よりもご飯が食べたいんだけど、何処か知りませんか?」
「貴方たち、もしかして何も知らずにここにきたの? だったら先ずはここで出回っている通貨と交換しないと、飲食店に行っても何も変えやしないよ」
ここは通りのくせをして、独自の通貨も出回っているらしい。
全く、この通りに来てからまだ数分程しか経っていないのに、驚かされてばかりだ。