第八話③
「それじゃあ改めて、よろしくね。マヤくん♪」
「……マヤくん? 何を急に、そんな呼び方をされたのは初めてだぞ……」
「だってハーレムに入ったわけだしね。これからより親密になる為にも、こう言った呼び方の方が距離が縮まりやすいと思うんだ。マヤくんもそう思わない?」
「そうか……あーいいと思うぞ……」
急な呼び名に困惑してしまい、リアクションに困っていると、アカリはそんな俺を見て馬鹿にするように笑い始めた。
「貴方あだ名すら付けられたことがなかったのね。……本当、可哀想で可哀想で……」
笑いを押し殺すようにしているアカリに気を取られていたのか、こちらに迫ってきているヒメノに気がつかなった。
気がついた頃には、ヒメノは俺の手を両手でギュと握りしめながら見つめてくる。
「これからもよろしくね。マヤくん」
何とも愛らしく、まるで萌アニメのような可愛らしい表情でそんなことを言ってきたヒメノから、俺は慌てて手を振り解いてその場に倒れ込んだ。
「な、何をするんだ急に!?……驚かせるようなことをしないでくれ!」
俺は自身の手をじっと見つめる。
そんな俺を一体どうしたのかと、アカリはじっと見つめてくる。
「何?もしかして貴方、ヒメノさんの顔を見てときめいちゃったわけ?ウブで可愛いわね」
「そうじゃない。俺はそんなチョロインのような存在ではない。ただな……いや、何でもない」
誤魔化そうとしたが、アカリとヒメノはまるで俺を珍しい動物でも見るように観察してくる。
更にバレないように腕を後ろに下げたのだが、それが問題だったみたいだ。
直ぐに何かに気がついたような顔を浮かべて、アカリは俺の元へ近づいてきた。
「ねー貴方もしかして……」
「何だ? 用がないなら、その場から離れてくれ」
そう口にした途端のこと、アカリは俺の頬に手を添えてきた。
それに逃げるような態度をとった事で、彼女はお互いを見て頷き、納得したような態度をとった。
「ねぇ貴方もしかして、女の子に対してびっくりするくらい免疫なかったりするの?」
「そんな筈がないだろ。俺はハーレムを目指しているんだぞ?」
「そう、ならアタシともう一度握手してみてよ。せっかくのハーレムメンバー第一号だよ? 会えるうちに親睦を深めようよ」
そう言って手を出されるが、俺は掴むことが出来ずにその場に俯いた。
すると彼女らは思わず吹き出すようにして、笑い声を上げ始めた。
「あんた本当可笑しいわね。「ハーレムを作るんだ!」とか言ってる癖に、女の子に耐性が全くないとか…アッハハ!」
「そんなに笑うものじゃないよアカリさん。アタシも別に男の子に免疫があるわけじゃないし……ただ、それにしてもあの慌てようは……だっはは!!」
俺のプライドは今までにない速度で傷つけられていった。
まさかハーレムメンバーを集めることに成功したその後直ぐにこうなるとは、数刻前の俺は考えもしなかっただろう。




