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第八話②

――

 

「そう言った話なら、俺も混ぜてもらわないと困るんだがな」


 奴らの元へ駆けつけてそう口にすると、皆は先ほどまでの会話を聞いていたのかと言ったような、驚いた顔を浮かべ始める。


「ど、どこから聞いてたのかな?」

「最初からだ。甘ったるい会話ばかりしやがって、家族の団欒を見せつけられているような感覚だったぞ」


 皆は驚いた顔をやめて直ぐに、林檎ほど顔を赤く染め始めた。

 そこまで恥ずかしい事ではないとも思うが、本人たちからしてみれば、第三者には見られたくはない会話だったみたいだ。


「いやぁ、何とも恥ずかしいな。あのやり取りを聞かれていたと思うとね」

「そもそも何故盗み聞きなどしておるのだ。わざわざここから離れてくれと言ったのを忘れたのか」

「そう怒るほどの話じゃないだろ。それに俺は茶化しに来たわけじゃない。解決策を持ってきてやったんだ」

「これは我々で解決すべき問題だ。口を挟むな」

「何も強制するつもりはない。話くらいは聞いてくれ」


 バーグは俺の態度に腹を立てたのか不機嫌そうにしているが、ヒメノがいる手前、あまり強い態度で俺に察しようとはしなかった。

 俺はバーグの態度を気にする様子を見せずに、会話を続けた。


「まず、ヒメノが外に出れないって話だったが、それなら問題ない。いつでも俺が連れ出してやる。それで解決だ」

「でもそれだったら、皆んなアタシの夢が食べれなくなると思うんだけど?」

「何もこいつらは、四六時中何か食ってないと死んでしまうわけじゃないんだろ?」

「当たり前だ。我々は1日に1度の食事で十分だからな」

「それならヒメノを連れて冒険した後、直ぐにここへ帰してやれば問題ないだろ?単なる散歩のようなものになる」

「何を言っているんだ。お前たちはこの先、魔王城に向けて進むのだろ?ならば、往復だけでも数日…いや、数週間はかかるようになる。そうなればそんな事出来る筈が、、」

「そんな事出来る筈がない……普通はそうだ。ただな、ここだけの話だぞ?…浪漫に欠けるし、何よりも俺自身はやるつもりがない事なのだが、特別に教えてやる。俺は魔法を使えば、数時間で魔王城へ辿り着くことが出来るほどの力を持っている」

「は?」


 真っ先に驚くリアクションをしたのは、俺の隣にいたアカリだった。

 それもその筈だろう。これから長い期間をかけて魔王城へ目指す事を覚悟していただろうに、やろうと思えば数時間で着くと伝えられたのだ。

 こいつは何を言っているんだといった顔を向けられても文句は言えない。


「何よそれ?だったら今直ぐにでも、魔王退治が出来るってわけ?」

「あーそうだな。可能ではある」

「なら今すぐに……いや、何でもないわ。貴方はそう言ったことが嫌いだったわね」

「まだ会って間もないが、そう言った事は理解してくれているみたいだな」

「あまりに面倒な性格だからね。嫌でも覚えるわよ」


 アカリのいう通り、俺はそんなやり方で魔王を倒したいとは思わない。

 冒険という過程を得てから成し遂げるからいいのであって、この女神から与えてもらった、言わばチート能力を駆使して倒しても、何も楽しいとは思わない。


 第一そのやり方であれば、ハーレムが作れないしな。


「という事は、本当に先程の方法が可能なのか?」

「だからそう言ってるだろ。ヒメノが冒険する事も出来るし、ここに止まる事も出来るから、お前らも困らない。このやり方なら問題ないだろ?」

「あー勿論だよ……その方法なら、誰も不幸にならない」


 ヒメノは太陽の光の効果が切れてきたのか、少しずつ元の柔なか白髪に戻っていき、表情も元の優しい顔へと戻っていっていた。

 バーグは解決策を見つけたことが嬉しかったのか、先程までの不機嫌そうな態度は幻だったかのように消えており、小動物のような可愛らしい笑みを浮かべていた。


「ただ毎日はごめんだからな。本来、戦闘以外ではあまり魔法を使用したくはないんだ」

「大丈夫だよ。アタシも外の世界に慣れるまで時間がかかるだろうし、多くても月に一度か二度程度で大丈夫だよ」


 嬉しさを共感しようとしてか、ヒメノは俺の元へと近づいてきた。

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