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第七話⑥

「仕方ないから、ハーレムに入って上げるよ。特別にな」

「本当か…また揶揄っているじゃないだろうな?」

「そんな事ないよ。何だか楽しそうだし……それに君って面白いしね」

「勝手に面白がってるだけだろ」


 するとヒメノは声を上げて再び笑う。

 やはり馬鹿にしてるのではないかと疑う気持ちもあるが、見た限り入る意思は感じられはするので、ひとまず信じることにした。

 

「ただね……申し訳ないんだけど、ハーレムに入っても君たちについていく事はできないんだ。……それでもいいかな?」

「あー別に構わないぞ。最初からそのような気はしていたからな」


 断られるとでも思っていたのか、ヒメノは「本当にいいの?」と繰り返し聞いてくる。

 何も悪い事ではない。この旅を始める前から、全員と冒険できるだなんて考えてもいなかったくらいだ。

 

「別に無理についてこいだなんて言うつもりはない。会いたくなれば俺の力を使えば直ぐにでも会えるのだからな」

「そっか…アタシはてっきり、「俺たちについてこい!」と強引に連れて行こうとするのばかり思っていたよ」

「それは当然、ついてきてくれるに越した事はない。けれどお前にも事情があるだろうし、会って直ぐのやつと冒険したいとも思わんだろう。お前の意思くらい汲み取ってやる。なんせ、ハーレムメンバーの一員になるんだからな」

「ふーん。恋人には優しくするって事だね……と言うか、恋人であってるんだよね?」


 ハーレムメンバーについての指摘をされて、俺は始めてそれについて考えた。

 漫画やアニメではよく、主人公1人に対して複数の女の子が主人公の周りを囲む状態を、ハーレムと言ったりする。

 それに憧れてハーレムを築き上げようと思ったわけだが、果たしてハーレムとは、皆が主人公のことを好きでいないと成立しないものなのだろうか。

 

「……ハーレムは、ハーレムだ」

「何? 君もあまり理解していなの?」

「そんな事は……ない。ただそうだな。何というか、兎に角何らかの形の好きを与えてくれたらいいんじゃないか?」

「そうなんだ。じゃあひとまず君のことは好きだよ。面白いからね」

「それは何だ?友達とも恋人とも取れないような好きを口にしやがって」


――


 少ししてから俺たちは木から降りて、数時間ぶりに地に足をつけた。

 大地の安定感に感謝しつつ辺りを見渡すと、そこらに夢喰い族が心配そうに俺たちを見つめていた。


「ど、どうなったのですか……バーグ様」

「うむ。それがだな……2人とも、申し訳ないが少し外してくれないか?皆と、そしてクラウス様と話がしたい」

「…わかったわ。いくわよマヤト」

「言われなくてもそうする。……なるべく早くしてくれよバーグ」


 俺とアカリは少し歩いて島の岸までやってきた。

 ここまで来ればあいつらの話は聞こえないし、相手も安心して会話ができるだろう。


「よし、それでは盗み聞きでもするか」

「ちょっとあんた趣味悪いわね、やめなさいよ。そう言った事に魔法は使わないんじゃなかったの?」

「これは必要な事だ。ハーレムメンバーが絡んだ事には魔法は惜しまず使う。こんなタイミングで皆で話すだなんて、怪しいしな。あいつらは悪い奴じゃないだろうが、まだ完全には信用できない」

「これが今まで孤独でいたが故の代償ってわけね……哀れだわ」

「言ってろ。悪役令嬢め」

「言っとくわ。ぼっちくん」

「お前だけ暴言のバリエーションが多くないか?」


 呆れるアカリを無視しながら俺は魔法を使用して、相手の会話を盗み聞きし始める。

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