第七話⑤
「何?じゃあ私たちは、ヒメノさんの力で眠りそうになってたわけ?」
「その通りだ。本当に、面白い力だな」
俺は楽しさから笑みを溢したが、事態を理解したアカリは面倒だと言った顔を浮かべている。
「よし、それじゃあ次は君たちの番だね。アタシの知識目当てじゃない事はわかったけど、それじゃあ結局何をしにこの島にきたのか、教えてくれ」
彼女はじっと俺を見つめる。
吸い込まれそうな程に美しい瞳からは真っ先に目を逸らして、俺は説明を始めた。
「俺の冒険の目的は、物語の主人公になる事だ。その為に女神から頼まれた魔王退治を目的に頑張っていたわけだが、色々あってな気が変わったんだ」
「魔王退治? この話とそもそも関係があるのかもわからないけど、何だか大きな目標があったんだね。でも気が変わったって、それでどうするつもりなの?」
「魔王退治は引き続き行うつもりだ。アカリともそのような約束を交わしているからな。だが俺の目的はもっと偉大かつ壮大なことだ」
それがいよいよ本題なのかと、ヒメノはしっかりと話を聞く姿勢をとった。
俺はこれが俺の本当の目的だと高らかに宣言する為に立ち上がり、その解説を始める。
「俺は俺だけのハーレムを作るつもりだ。やはり主人公といえば可愛い女の子に囲まれるのが鉄則だからな。そのルールに乗っ取り、俺は自分の満足のいくようなハーレムをつくるんだ」
「本当バカね…あんたは」
話の腰を折るように、アカリはそんなことを言い始めた。
するとヒメノはくすくすと、何やら笑い始めながら口を開いた。
「えーと、何かな……それじゃあアタシをそのハーレムメンバーに入れようってわけで、ここに来たの??」
「あくまでも、その可能性があってやってきた。ここにくる以前から決まっていたわけではない。お前を見て判断しようと思ったんだ」
「それで、結果はどうだったわけ?」
笑いを我慢しながら、ヒメノは俺にそう問いかける。
「合格だ。お前は俺のハーレムメンバー1人目に相応しい」
「相応しい……って一体何様なの?ほんと面白いわね…だっは!!」
遂に我慢の限界だと言うように、ヒメノは声を上げて笑い始める。
俺は至って真剣だというのに失礼なやつだと思いながらも、あまりに笑っているので叱る事も躊躇してしまう。
「笑うことないだろ…俺は真剣だ」
「だから面白いのだよ。何を真剣に言ってるんだってね。はーほんとお腹痛い……。まぁその何かな、どうしよっかな。悩むなー」
「あら、検討はするのね。やめておいた方がいいわよ。こいつヒメノさんが思っているよりも、かなり馬鹿よ」
「悪役令嬢は黙っていろ」
「追放されたお間抜けさんこそ黙ってくれるかしら」
俺はアカリをじっと睨みつけるが、喧嘩を売ってきた本人は買う様子を見せないので、ヒメノとの会話を続ける。
「悩むことないだろ?こう言った事は直感に任せろ。つまり俺のメンバーに入ってくれ」
「えーでもなぁ。アタシとしては、もっと熱烈に告白してほしいなー」
ニヤつき顔でそんなことを話す。
完全に俺で遊んでいるような態度をとっているなと思いながらも、何とか説得をしようと頭を回す。
「仕方ない、ならば俺のハーレムメンバに加われば、あらゆるメリットがあることを教えよう」
「口説くでもなくメリットをあげるなんて……本当貴方らしいわね」
「どういう意味だ?」
「別に」
「ほらほら喧嘩しない。メリットって何?教えてよ」
「まずはそうだな。この島を守ってやる。それからお前自身もな」
「うーん。アタシ1人で何とかなりそうな事だけど、そう言った危険を気にせず眠れるのはいいよね。うんうん別にいい気がしてきたなぁ。ハーレムに入ってあげてと」
「ほんとうか!?」
「うーんでもやっぱりどうしよっかな〜。んふふ」
確信した。こいつはあまり性格がよろしくない。
少なくとも、太陽の元にいる間はな。
「あっそうそう。それで、貴方のハーレムメンバーに入ったら、何かしないといけないわけ?それも聞きたいな」
「そうだな…何をするってこと事はない。強いていうなら、物語のように俺のことを好きになってくれたなら、ベストなくらいだ」
「この世で1番の難題ね。やっぱり入らない方がいいんじゃない?」
「難題なものか。算数ドリルほどの難易度だろ」
「そっか、好きになればいいんだ。はいはい、好きだよマヤト〜好きだよって?…だっはは!!」
完全に馬鹿にしているな。
不快に思って席に勢いよくつくと、いよいよ真剣に答えるというように、ヒメノは俺を見つめてきた。




