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第七話④

「アタシは『ヒメノ・クラウス』かつて存在した妖精族の末裔よ。よろしくね」


『妖精族』か、この世界に来てからまだ聞いたことがない存在だ。

 現代のアニメや漫画などでは数え切れないほど登場していた種族名だが、そのどれもが小人に羽が生えたような見た目をしていた。

 この世界と俺たちの世界を結びつけることが良いことだとは思わないが、何ともイメージの違いにギャップを感じてしまう。


 問いかけたい事はあまりに多いが、名乗られた以上、俺たちも名乗らなければならない。

 俺とアカリは簡潔に挨拶を済ませて、気になる事を質問する事にした。


「マヤトくんにアカリちゃんね。しっかりと覚えたよ。それで早速だけど、何を知りたいのかな?アタシも聞きたい事はあるけど、先行は君たちに譲ってあげるね」

「感謝する。それから俺の事は呼び捨てで構わな…色々と聞きたいことがあるんだが、まずは『妖精族』のことを知りたい。それからお前の髪の事だとか、顔色の事だとか、何故この島で眠り続けているのかだとか」

「随分と多いな……だけど、そのどれもが『妖精族』である事と関係があるんだ……あっ!ちょうどいい、太陽が出てきたね。先ずはこれを見てもらおうかな」


 手で日差しを防ぐようにしながら空を見上げると、太陽に隠れていた雲が徐々に顔を見せ始めているのがわかったり

 そして太陽の姿が露わになっていくと比例するように、俺の近くで何かが蠢き始めている事に気がついた。


「え!?ちょっとヒメノさん大丈夫!?」


 アカリの驚いた声に釣られて正面に視線をむけると、ヒメノの髪が勢いよく抜け始めていている姿が目に映った。

 それを追い越す勢いで、ヒメノの瞳と同じ色をした、翡翠色の髪がみるみるうちに伸びていく。


 何が起きたいるのかと見物していると、足を越すほど伸びたところでようやく髪は成長を止める。

 そんな長く、太陽の光に当てられて輝きを放つ髪を、ヒメノ両手で掻き分けて、太陽を見つめた。


「ハーハッハッハッハッハー!!やはり太陽の光にあたるのは心地がいいな!!ハーハッハッハッハッハー!!」

「どうしたんだ…いったい…」


 前が見えるように伸びた髪を掻き分けて押さえながら、ヒメノは高らかに笑い声を上げる。

 最初に会話を交わした時とは随分と印象が違っており、妙にテンションが上がっているというか、キャラクターがあまりにも違う。


 そんな気が動転しそうな状況だというのに、不思議と俺は眠気を感じ始めたのだ。


「…アカリ、少しこちらこい」

「急にどうしたのよ?それよりもヒメノさんが、」

「いいから来るんだ。眠りたくなければな」


 俺はある事に気がついて、状態異常を無効化する魔法を何層にも重ねながら、より強固な物へと作り替えていく。

 少しして作業が終わると、高らかに笑い声を上げ続けているヒメノを睨みつける。


「おいヒメノ!!こう言った事は先に言え!危うく魔法をくらうところだっただろ!」

「え、ちょっと、何の話をしてんのよ?」


 アカリは状況を理解出来ていないみたいだが、構わず会話を続けた。


「あーごめんごめん。先に伝えとくべきだった。『妖精族』は、太陽の力を取り入れる事で、力が途端に増幅するんだ」

「それに伴って、身体機能や精神面も強力なものになる。クラウス様の魔法は癒しの力だ。耐性のある我ならまだしも、よく眠らなかったな」

「良く眠らなかったなじゃなくてお前もだな…まぁいい。だから急に歩けるようになったり、今も顔色が妙に良くなったのか?」

「大正解だ。それに先程よりも気分が上がっている。少し口調が強くなるかもだけど許してくれ」


 随分と奇妙な力だ。

 だが少し俺は、興味を惹かれ始めていた。

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