第七十四話③
2人のその言葉を、俺は素直に嬉しく思った。
次の再会はいつになるのかわからない。だからこそ、この気持ちを忘れずに覚えていたいものだ。
「それではまたな。俺たちのこと忘れるなよ」
「また会えることを楽しみにしていますね」
挨拶を終えた俺たちは、いよいよ足を進め始めた。
そんな俺たちに手を振りながら、2人は感謝の言葉を伝えてくる。
「本当にありがとうございました。どうかお元気で」
「この恩は忘れません。お2人の旅が幸せで満たさせることを願っております」
俺たちも手を振りかえして、別れの言葉を交わす。
もう当分はこの顔を見ることは出来ないと思うと寂しく思う。これも旅の醍醐味なのだろうか。出会いと別れ、これを繰り返して成長していくのだろう。
暫く歩いて、遂に2人の姿が見えなくなってしまった。
最後まで手を振り、見送ってくれていた2人の姿。それが次に出会うまでの最後の記憶になるのだ。
当分はあの2人との思い出を更新することが出来なくなったことを、改めて実感した。
「……別れとはなんとも言えない気持ちになるのだな」
「そうね、寂しくはあるんだけど……それだけじゃない、言葉では言い表せない悲しさがあるのよね」
次に向かう国が楽しみだという気持ちよりも、この気持ちの方が強く主張してしまっている。
アカリも何処か暗い表情を浮かべてしまっており、晴れているのに曇っているかの様な寒さを感じた。
このままでいいのだろうか。別れを惜しんで暗いままで……これでは旅を楽しめていないと言えるのではないのだろうか。
そう思った矢先、俺は軽く自分の頬を叩いた。
「これじゃあダメだな。ようやく新天地に赴けるのだ。こんな暗い気持ちでいるべきではないのだろう」
「……うん、そうね。別に永遠に会えないわけじゃないんだし、落ち込みすぎるのも良くないわよね。明るくいきましょ」
暗い顔をしていたアカリも、俺の言葉に続いて笑顔を取り戻す。
「その息だ。次に向かうのはカルック王国、魔法の国だ。楽しみになってきたぞ」
「確か魔法の知識をつけたいのよね? なら国についたら先ずは、魔法に詳しそうな人を探すのかしら」
「いや、先ずは仕事が先だ。俺たちは未だ一文無しだからな」
「あぁ……そうだったわね。お菓子ならあるけど、お金はなかったわ」
「金を稼いで、その後魔法知識の習得に取り組むぞ。そして数多の国を辺り歩いて英雄となり、この世界の主人公となったところで、再びパンプキンたちに会いに行こう」
俺のこの発言に、アカリは吹き出すようにして笑って見せた。
「急に数年の予定を決めないでよ。さっきまで落ち込んでたのに、馬鹿みたいね」
「馬鹿ではない、単に計画性があるだけだ。こうでもしないと、中々再開の目処がつかなくなるからな」
「ふーん、貴方なりに考えているのね。ならひとまずは、その予定でいきましょ。私もついていくわ」
「当然だ。お前は今後も俺についてこい」
「何で命令口調なのよ。貴方が私についてきてもいいのよ」




