第七十四話①
「それじゃあそろそろいきましょ。もうすぐお昼になっちゃうから」
「そうだな、出発しよう。いよいよこの国ともさようならだ」
胸にあった不快な物はアカリによって取り除かれて、気分のいいままに外へと足を運ぶ。
いつもと変わらない空だというのに、今日は特別明るい気がした。
「あっそうだ。パンプキンさんや女王様への挨拶はどうする? 改めてするのか、このまま国を出るのか」
「昨日別れの挨拶は済んだんだ。名残惜しいが、もう国を出よう」
再度改めて話したい気もするが、2人はこれから通りのことや国のことでとても忙しくなっている最中だろう。
もう挨拶は済んでいるしな、邪魔はしないでおこう。
俺たちは最後に辺りを見渡しながら、通りの出口へ向かっていく。
「1ヶ月すらいなかったのに、とても長い間いた気がするわ」
「刺激の強い毎日だったからな。当分は記憶も、疲れも取れなさそうだ」
会話を交わしながら先へと進んでいくと、その後すぐに出入り口が見えてきた。
この通りへやってきた際に対応してもらった門番らしき人物がそこにはいる。
それは分かるが、その他にも何人か門の周りに人影があることに気がついた。
「あれって……」
「わざわざ来てくれたのか」
そこにはパンプキンと女王の姿があった。女王の周りには、馬車や警護と見られる兵士の姿が見える。
パンプキンがいることにも当然驚いているが、女王がいることには更に驚いた。
女王が簡単に城の外、もっというならその街から出ることは一般人と比べて困難な筈だ。
それも解消に向かっているとはいえ、まだ関係が回復していない通りへ足を運ぶことは、単なる他の街へ行くよりも難しかっただろう。
それなのに足を運んでくれるとは、もはや申し訳ないとさえ思ってしまう。




