第七十三話④
「どう私の提案、飲み込んでくれるかしら?」
俺は笑いから生まれた涙を拭いながら、言葉を返す。
「提案としては嫌いじゃない。だが、その提案には乗れそうにないな。俺がお前についていくのではなく、お前が俺とこの世界に残るんだ」
「どうせそういうと思ってたわ。今はその案に乗ってあげる。だけど、もしも元の世界に帰れる手段を見つけたら、その時は私も強引にいくからね」
「その時は話し合いか、口論になるかもしれないな」
「えぇそうね。だけど、どちらの意見に転ぼうとも、これからも一緒よ。よろしくね」
「あぁ……よろしく頼む」
上手く話を纏めてくれたものだ。
俺の意見を尊重してくれた上で、自身の意見も主張する。俺には持ち合わせていない、コミュケーション能力と言えるだろう。
これは今まで多くの人々と関係を築いてきた、アカリの強みといえる。
本来返答することさえ面倒に思うであろう俺の意見に、ここまで真摯に向き合ってくれたのだ。
ここは素直に感謝しなければならない。
この今も流れる自然な空気を壊さない為にも、無駄に畏って感謝の言葉をかけるのではなく、これから行動として示していこう。
捻くれた俺だが、改めてアカリを1人の仲間として、友人として、大切にしようと思う。




