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第七十三話③

 そんな綺麗な言葉をかけてくるアカリに俺は耐えられず、思わず目を逸らしてしまった。


「……お前は寛大すぎる。叱られる覚えはあっても、優しくされる覚えはない」

「別に優しくしてるつもりなんかないわよ。ただ私も、私自身の意見を述べようかなと思ったの」


 そう言いながら顔をグッとこちらに近づけて、逸らした俺の目線を無理矢理合わすように、真っ直ぐに見つめながら話を続ける。


「私、あの後深く考えたの。だけどやっぱり、前世での友達に未練はあるみたいなの」


 それは当然のことだろう。

 いくら前世のこととは言え、忘れてしまえというにはあまりにも酷だ。

 

「だけど、もしもそれが理由で元の世界に帰ったとしても……次は、貴方が未練になる。そんな気がするの」

「……俺がか?」


 自身の耳疑い、思わず聞き返してしまう。


「そうよ。元の世界に帰ったところで、きっと私は後悔する。貴方を置いてきたことをね。だからこう言った結論に至ったわ」


 そう言って勢いよく俺の手を掴んで、強引に身を寄せる。


「もしも帰る事が可能になるだなんて日がくれば、貴方を一緒に連れて帰る。それが私の導き出した結論よ」


 突然のアカリの発言に俺は動揺を見せてしまい、少しの間固まってしまう。


 だが、少ししてから思わず吹き出してしまった。


 初めは「横暴だな」と言葉を返そうと思ったが、俺は人のことを言えたものではことに気がついた。


 先日空き地を探す際に、アカリと共に前世について話し合った。

 その際に俺は「もしも元の世界に帰れる時がしたとしても、俺はお前を引き止める」と、アカリに言ってしまっていたのだ。


 そんな似た様な発言を放ったアカリに対して、互いへの想いは似たようなものであると感じ。安堵したような感情に満たされた。

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