第七十三話①
「いや……やっぱり聞かなかった事にしてくれ。あまりにも身勝手な意見だ」
恥ずかしさや罪悪感でいっぱいになってしまい、俺は自身のベッドへと戻り、アカリに背を向けたまま横になる。
アカリはその間、何も話していない。
仲間が泣きそうになっている。そんな場面で俺は自分の思いだけを口にしたのだ。これではまるで、追い詰めている様なものだ。
何故こんなことをしてしまったのか。いつも身勝手な俺とは言え、ここまで身勝手だっただろうか。
頭をかきながら考えるが、出てくる答えは曖昧なものばかりだ。
その中でも納得がいったのは、思いが溢れてしまったということ。
ずっと胸の中にあった悩みが、遂に我慢の限界を迎えて溢れてしまったのではないか。
仮にそうだとすれば、我慢するべきだった。
もっと他の場面で……いや、自分の胸の中にしまっておくべき事だったのかもしれない。
結局、その夜はお互いに顔を合わせることもなく過ごした。
アカリがいつ眠りについたのかもわからないまま、俺も眠りについたのだ。
――
目覚めが悪い。
あまり眠れていないことで疲れが取れていないからか。それか昨日の件が尾を引いているのか。
恐らく後者だろうな。
視線を左にずらすが、アカリの姿は確認できない。
何処かに出かけてしまったのだろうか。
正直、今このタイミングで顔を合わさずにいられて、ほっとしている自分がいる。
何というか、自分が原因ではあるのだが、顔を合わせるのが何だか気まずいのだ。
すると、トタトタと廊下から足音が聞こえ始める。
まさかもう帰ってきたのかと、鼓動が上がる。




