第七十二話②
「てことはあれか。お前のその姿と元の姿は違うということになるのか?」
「えぇそうよ。この姿は昔やってたゲームの悪役令嬢の姿になるわ」
「ゲームの悪役令嬢……どうりで容姿が整ってるのか」
自分の中で、少しばかり気になっていたことが明らかになっていき、あらゆる事に納得がいき始める。
「ふーん。容姿が整っていると思ってたのね」
「あ? ……別に、そこはいいだろ」
「えぇ、別に構わないけど……。もしかして、容姿が気に入って私を仲間にしたのかしら?」
「本気で言っているのか? 俺に限ってそんなことある筈がないだろ。お前の元の容姿については知らんが、どんな姿でも俺はお前を仲間に誘っている」
「あら、いい事いうじゃない。好感度が少しだけ上がったわよ」
「あーそうか。それは良かった」
面倒なノリをしやがってとため息を吐いた後、転生についての話を、また改めてするべきなのだろうなと考えた。まだわからないことが多すぎるからな。
「話がそれてるけど、元に戻さなくていいわけ?」
「……そうだな、確かにそれていた。だが兎に角お前は、帰りたくても帰れないってことなんだろ?」
「雑な言い方ね、だけどそうよ。私はどちらにせよ元の世界に帰りたいとしても帰れない。厳密に言えば、帰る場所はもうないの。だから安心しなさい、寂しい思いはさせないわ」
まるで既に諦めているかの様に話しているが、何処か声や表情からは、哀しみが溢れている様に感じる。
「……お前の友や家族は、容姿が変わっただけでお前を受け入れなくなるような人間なのか?」
「容姿だけじゃないでしょ。遺伝子レベルで全てが違うのよ。違わないのは科学では証明しようのない心だけ……どうしようもないのよ」
悲しいが、アカリの意見には納得せざるを得なかった。
仮に元の世界にアカリが帰ってきたとしても、皆はアカリのことを、自身をアカリと名乗る他人として扱うのだろう。
転生だとかそう言ったものの話は現代ではよく耳にするようになったが、それを心から信用している人間は少ない。
この世界ならば解決策が見つかる可能性もあるかもしれないが、現状はどうしようもない。




