第七話②
「ふーん。やっぱりアタシに会いに来たんだ……いつの時代も変わらないね。ママの言ってた通り」
少し呆れた顔で話している姿を見るに、自分に会いにきた人間をあまり好意的には思っていないように感じる。
「何だ?お前に会いにくるのは不味かったか?」
「別に不味いって事はないけどね。ただ何ていうのかな?こんな知識を持とうとするなんて、理解が出来ないだけかな」
彼女の発した言葉の意味があまり理解できず、俺は馬鹿に思われることを承知で聞き返した。
「こんな知識とはどういう事だ?お前は歴史的な知識を持っているだけじゃないのか?」
「あれ?……もしかして貴方たち、詳しいことを知らずにここにきたの?」
自分の予想とは違ったのか、彼女は驚いた顔を浮かべる。それと同時に、何やら少し嬉しそうな顔を浮かべ始めたのだ。
「クラウス様。こやつらは知識を求めてではなく、貴方と話がしたいとの事で、ここへやってきたみたいです」
バーグは先程まで俺にしていた態度とは違い、下手に出ながら彼女に俺たちについての説明をした。
先程の話の通り、本当に彼らにとって彼女は敬うべき存在らしい。
「そうなんだ。……わざわざアタシと話にね。知識を目的ともせず……それったなんだか、余計に怪しいね!」
そう言ってケタケタと笑い出す。
別に面白いことなど何もない気はするが、楽しそうにしている事だし放っておいた。
「まぁいいや。自己紹介もしたいし、場所を移そっか。バーグ悪いんだけど、背中に乗ってもいいかな?」
「勿論でございます。貴方になら幾らでもお貸ししましょう」
「この人たちも乗せてもらいたんだけどいい?…ダメかな?」
「………………勿論構いません」
随分と嫌そうにしているな。
そんな態度を見て、俺は少し笑ってしまった。
「それじゃあ行こっか。ついてきて……アイタッ!」
俺が笑っている最中に、彼女は動き始めようとしたのだが、その瞬間毛布目掛けて倒れ込み始めた。
何をふざけているのかと彼女を見てみたが、どうやらふざけているつもりではないみたいだ。
「何だ?まだ寝ぼけているのか?」
「いや……そうじゃなく、て、アイタッ!暫く動いてなかったから、アイタッ!筋力が弱ってるみたいだね……アイタッ!」
何度も立ちあがろうとするのを繰り返すその姿は、少し愛らしく感じるが、それと同時にあざとい仕草に見えてしまう。
「アカリ、手を貸してやってくれ。これじゃあ一生ここにいる事になってしまう」
「私?貴方が貸せばいいじゃない」
「うんうん。アタシとしても、男の人に協力してほしいな」
すると彼女は、子供が抱っこをせがむように、両手を広げながら俺を上目遣いでこちらを見つめてくる。
「…どういうつもりだ?手を貸せと言ってるのか?」
「手だけじゃなくて、出来れば全身を貸してほしいの。アタシ1人じゃ、バーグの背中には乗れないから」
そう言いながら体を揺らして、早く私を運びなさいと言うような態度を取ってくる。
俺は少し考えた後ため息を吐いて、仕方なく魔法を使用し始めた。




