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第七十一話②

 外には点々と街灯があるだけで決して明るいとは言えず、立ち並ぶ建造物も何処か不気味ではあるが、家の中から微かに聞こえてくる笑い声と、窓から漏れてくる甘いお菓子の香りのおかげで、夜だというのに怖さを感じる事はなかった。

 

 誰かとすれ違うこともなく、俺はただ真っ直ぐ、目的も持たずに通りを歩いた。

 

 立ち並ぶ家はどれもハロウィン仕様のようなものばかりで、中には童話の様な可愛らしい家も建っていた。

 多種多様な外装をしているが、どれもこの通りの雰囲気を壊さない様になっている。

 皆が協力して、この通りのイメージを守ろうとしているのだろうか。そうだとすれば、何処か和んでしまう。

 

 この通り独特の落ち着いた雰囲気の中、散歩するというのはとても気持ちがいい。

 今日は夜だというのに肌寒くなく、寧ろ肌を掠める夜風が心地良く感じる程だ。


 この通りに来てからあらゆる事があった。その多くは言わば、自分にとってマイナスなことばかりだった様に思う。

 だが、悪い事だけを覚えておくのではなく、こう言った何気なく良いと思えたことも忘れずにいたい、ふとそんな柄にもない事を考えてしまう。


 眩しいくらいの月を眺め、改めてこの世界が元いた場所とは違うのだと実感する。

 先日、アカリと元いた世界について話した事があったな。


 あの時アカリは、出来ることなら元の世界に帰りたいと口にしていた。

 もしも、もしも仮に元の世界に戻る術が見つかれば、俺は彼女を快く見送れるのだろうか。

 次に向かうのは魔法の国なのだ。帰還の術を見つける可能性もゼロではないだろう。


 ふとそんな事を考えたが、それを猛烈に恥ずかしく感じ始めてしまい、顔が火照っていくのを感じた。

 これではまるで、アカリがいなくなってしまう事が、寂しいみたいではないか。


 アニメのヒロインのような考え方になっているのが物凄く恥ずかしい。

 夜だからか、いつもは考えない様な事を深く考えしまっているのだろう。

 通りを楽しむはずが、何を考えているのだと頭を抱えた。

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