第七十話③
「じゃあ西に進みましょうか。明日、何時ごろにここを出ようかしら?」
「あっさりしているな。西に向かうにおいて、何か気になることはないのか?」
「気になること? 魔法使いは今まで何人か会ったことがあるけど、皆普通の人だったから、特にないかしら……。あぁ、訂正するわ。1人を除いて普通の人だったわ」
「俺が異常者だとでもいいたいのか?」
「異常者までは言わないわよ。ただ変わっている人、端的に言うなら変人ね」
ただ向かう国を決めているだけだというのに、こんな言葉をぶつけられるとは思ってもみなかった。
とは言え、そんな事を気にするよりも、次に向かう国の事で俺の頭はいっぱいになってしまっていた。
現在、俺の魔法に関する知識はこの世界でいえば一般教養レベル以下だ。
全ての魔法が使えるというのに、実に持ったいない。
なるべく早くこの問題は解決しなければと思っていたが、その問題はカルック王国に行くことで解決できるかもしれない。
いや、高い確率で解決出来るだろう。
何せ、魔法使いが最もいるとされている国なのだ。 多くの情報を得られるだろう。
今はそれが、楽しみでならない。
「明日の為にも早く眠るぞ。昼にはこの国を出るつもりだからな」
「お昼に? ……随分と早いと思ったけど、街灯もない道進むのだから、なるべく早く出るに越したことはないってことね」
「まぁどちらにせよ、何日かは野宿になるだろうがな。ここから歩いて3日はかかるのだから」
「地図だと近くに見えるのに、3日もかかるのね。……ていうか、馬車か何かで送ってもらえないの?」
「カルック王国行きの馬車自体はあるだろうが、無一文の俺たちを運んでくれる様な馬車はないだろうな」
パンプキンや女王に話せば、もしかすると金を出してくれるかもしれないが、もう随分と礼は貰っている為、これ以上求めるわけにはいかない。
これは遠慮というよりも、プライドのようなものだ。俺は、誰かに頼るということを好まないからな。




