第七十話②
両国共に、とても捨て難い。
異世界ならではの獣人といった存在に会ってみたいといった好奇心と、自信が魔法使いである事から、新たな可能性を広げる為にも魔法が盛んな国に行っていみたいと言った感情が睨み合っている。
どちらにも寄ってみるといった選択もあるわけだが、それをしてしまうと、あまりにも先へ進めていない状況になってしまう。
ただでさえ、この国に長居してしまったのだ。次からはなるべく国々への滞在時間を減らしたい。
別に急ぎで魔王城へ行く理由があるわけでもないのだが、時間は有限であることから、無駄に消費はしたくないのだ。
「で、どっちに行きたいわけ? 明日には出発するのよ」
「わかっているから少し待て。……因みに、お前はどちらに行きたいとかはあるのか?」
「私? そうね……。どちらかといえば西の魔法が盛んな国かしら。獣人の国は、文化の違いとかが多そうだから」
納得の行く意見だ。パンプキンから獣人と人間は敵対していないまでも、文化の違いによって価値観にズレが生じているとは聞いている。
それが原因で、喧嘩に発展することもあると言っていた。
そう考えると、俺たちと同じく人間が暮らしている魔法の国へと進むべきなのだろうか。
少しばかり時間が経った後、再びアカリは俺へ質問を投げかけてきた。
「どう、結論は出たの?」
「あぁ一応な……。悩みはしたが、やはり西へと進み、魔法の国へ向かうのが無難だろう。別に獣人の国へ行かずとも、今後何処かで会えるだろうからな。今は更に知識を蓄える為にも、魔法に詳しい西の国へ行くべきだと考えた」
西の国の名は『カルック王国』。歴代最強とされている魔法使いの弟子が女王を務めている、小規模の王国だそうだ。
人口も他国と比べると少数であるが、軍事力は他国を寄せ付けない強力なものとなっているらしい。
この世界では、魔法というものはかなり強力なものであると言った扱いを受けているからな。それを得意とする者が集うこの国が、そのように強力なのには納得がいく。




