第六十九話③
この部屋で集まってから数時間、月が沈み始める時間まで話は続いた。
「助かったぞパンプキン。今聞いた話を全て頭に叩き込めたかはわからないが、少なくともこれからは苦労せずにこの世界でやっていけそうだ」
「この世界のルールだったり、タブーや風潮を聞けたのは大きかったわ。これで、なるべく誰かと衝突しないですみそうね」
あまりに長い話だった為、もしかしたら覚えきれていない箇所もあるかもしれないが、途中からアカリがメモを取ってくれた事で、それに対する心配は無くなった。
まだ新しい冊子だったというのに、あっという間に数ページを文字で埋め尽くした事を考えると、やはり余程濃い話だったのだろう。
ここまで詳しく話してくれたパンプキンには、偉く感謝しなければならない。
「お役に立てたのなら良かったです。話を纏めるのが下手なもので、少し説明に時間がかかってしまった事は、本当に申し訳ないですが……」
「いや、寧ろあれ程詳しく話して貰わなければ、この世界に疎い俺たちには伝わらなかっただろうからな。ベストな話し方だったと思うぞ」
「そうですよ。とても分かりやすかったです」
「でしたら良かったです……。他には何か、聞いておきたい事はありませんか? 何でも話させていただきますが」
「ここまで話してもらったのだから、もう十分だ。改めて、感謝するぞ」
そう言って俺は軽く頭を下げたが、パンプキンはより深く頭を下げた。
それを見たアカリは自分も頭を下げつつ、俺の頭を手で押して、より深く頭を下げさせてきた。
礼も終えて頭を上げ、俺は先程貰った地図を広げる。
「先程話を聞いた限り、次に目指すのはこの2つの国が良さそうだな」
そう言って俺は2つの国を指差した。
そこの2つはここからかなり近い距離にあるのだが、別に距離でその場所を選んだわけではない。
何せ近い国で言えば、後もう2つもあるのだから。
ならば何故、わざわざ指差した2つの国に絞ったのか。理由は簡単だ。
「そうね。他の2つの国は、既に魔王軍によって進行を受けてるものね……」
そう、アカリの言うように、既に近くにある4つの国のうち、2つは魔王軍によって進行されているのだ。
支配とまではいかないらしいが、既に何度か攻撃を仕掛けられており、降伏するのも時間の問題ではないかと両国とも言われている。




