第六十八話④
「まぁ兎に角だ。俺たちはこことは違う世界から来た。だからこの世界の事を、妙に理解仕切れていないところがあるんだ」
「この街にも、この世界について詳しい人がいるって聞きつけたから、やってきたのよね」
「なるほど…そうだったのですね。だから、私にこの世界についての情報が欲しいと……全て理解しました。でしたら遅くなりましたが、改めてこの世界についての話を……いや、それは後にしましょう」
そう言いながら、パンプキンは俺たちよりも後ろの方に視線を向けた。
何があるのかと後ろを振り向くと、そこには既に準備の完了した屋台がずらりと立ち並んでおり、そしてそこにいる店主たちは、皆俺たちに手を振っていた。
ここからでも、屋台にぎっしり詰め置かれたお菓子の甘い匂いが飛んでくる。
「長話してないで、早くきておくれよ!」
「あんたらがいないと、始めらんないぜ!」
どうやら、俺たちが話終わるまで待ってくれていたみたいだ。
「随分と引き留めてしまいましたが、今はお祭りをお楽しみ下さい。お話はまた後で、私の部屋でしましょう」
「ありがとうございます。では、そうさせていただきます」
「あぁ……いや、わざわざ部屋まで行かずとも、その辺で話してくれれば大丈夫だぞ」
「そうですか? でしたら、直ぐそばで部屋を借りて待っていますので、祭りが終わり次第、また迎えにきますね」
「すまないな。感謝するぞ」
パンプキンは軽く頭を下げた後、その場を離れていった。
アカリはその間も、早く屋台に向かいたいのか、ウズウズとした様子を浮かべている。
「そんなに行きたいのなら、早く行ったらどうだ? その方が皆も喜ぶだろ」
「何よ、貴方は行かないわけ?」
「俺はゆっくり回るつもりだ。何なら、その荷物を持ってやっててもいいぞ」
「結構よ。これくらいの荷物、1人で運べるわ。せっかくなんだから、一緒にまわりましょうよ」
「一緒にね……俺はお前のテンションについていける気がしないのだがな」
「別についてこようとしなくていいわよ。私が引っ張ってあげるから」
そう言って、アカリは強引に俺の手を引いて祭り会場まで駆け出した。
そんな突拍子のない行動に動揺したものの。
妙にはしゃいでいるアカリの姿と、それを歓迎する通りのもの達と、祭りの煌びやかな雰囲気。
まるで子供の頃読んだ絵本の世界に入ったかのような、メルヘンで幸せな感情になってしまい、そんな自分に少し恥ずさを覚えた。




