第六十八話③
鼓動がほんの少しではあるが、確かに乱れたのがわかった。パンプキンの返答がどういったものになるのか、そういった疑問に緊張感を覚えてしまったのだろう。
そしてパンプキンは、少し間を開けた後に口を開く。
「こことは違った世界と言いますと……それはどういった世界なのでしょうか?」
この発言に、俺は口に出さずとも、心の中で笑ってしまった。ひょっとしたら笑みを浮かべてしまっていたかもしれない。
パンプキンは、迷う事なくアカリの発言を受け入れた上で、質問を返してきたのだ。
本来信用できるとは思えない発言に対して、疑う素振りを見せなかったそのパンプキンの姿に、俺は何故最初からこの男は疑うはずがないと信用できなかったのだと、まるで自分が馬鹿かのように思えたのだ。
「どういった世界……そうね、」
「この世界から魔法をなくして、科学のみを進化させた世界。それを想像してみてくれ。大体そんな感じだ」
「魔法がない世界ですか……それは随分と生きるのが大変そうに思えますが」
「案外そんなことですよ。こっちの方が便利なことも勿論ありますけど、それでもやっぱり、向こうのほうが便利なことは多かったです」
「便利なことだけが美徳とも思えんがな……。まぁ、そういった異世界からきたんだ。一応俺は、勇者としてな」
「私は……まぁ、何でもいいですよね」
大体のことは全てパンプキンに話した。誰かに言いふらすような奴でもないだろうし、大丈夫だろう。
仮に言いふらされたとしても、何ら問題はないだろうしな。
「そうでしたか……まさか、異世界からやってきた勇者様であったとは、思いもしませんでした」
「受け取り方によっては、悪口としてもとらえれるな」
「それは貴方の問題よ。捻くれすぎ。それに、勇者には見えないって、自覚ぐらいはあるでしょ?」
それは……そうだな。俺も自分を勇者だと思ったことはないし、なろうと思ったこともない。
あくまでも、主人公であればいいのだ。
「ですが納得いくところも勿論あります。城の前での決闘の際に見せたあの力、あれは並大抵のものが取得できる魔法ではありませんでした。今思えば、勇者様だから使えたのですね」
「勇者だからというよりも……この世界に来る際に、女神様から強奪したんでしょ?」
「人聞きが悪いな。強奪じゃなくて交渉だ。勿論、声を荒げてもいないし、罵声も飛ばしていない。あくまでも冷静に話し合って、力を授かったのだ」
「はいはい。そういうことにしたいならそうすればいいわ。私は全てを知ってるから」
嫌な言い方をするものだなとため息を吐いたが、アカリは俺よりも大きなため息を吐いていた。




