第六十八話①
かなり広い範囲を書き記した地図に見えるが、これでこの世界の一部でしかないとなると、この世界の広さは計り知れないなと圧倒させる。
改めて、俺とアカリの目指す魔王城までの距離の遠さを、実感して息を呑んだ。
魔法を使えば直ぐに魔王城に辿り着く事はできるが、風情がない。
だがそれをしないとなると……一体いつ頃の到着になるのだろうか。
それに、この地図について1つ気になることがあった。
「これは有り難く頂戴するが、1つ聞いてもいいか?」
「はい、何でもお話させていただきますよ」
「では聞くが、これは一体誰が描いたものなんだ? あまりにも広い範囲の記載に、距離や位置関係も正確に見える。ここから眠りの孤島までの距離などを確認してみたが、狂いはなさそうだ。これ程までの物、多くの者たちが協力して書いたとしか思えないが……お前個人が管理しているという事は、そう言ったわけでもないのだろ?」
「……鋭いですね、その通りです。そちらの地図は、Mrs.パンプキンが書き記したものになります」
Mrs.パンプキンの記したものか。
何となく察しはついていたが、やはり凄いやつだったのだなと感心する。
この地図をここまで正確に記したという事は、実際にこの範囲の街や国を巡ったということになるのだ。それも、正確な距離を測り、何処にどう言った街や国があるのかを認識し、そして何より、このパンプキン通りを管理しながらそれを行なっていたのだ。
並大抵の人間が、個人で出来る技だとは到底思えない。
これ程の人物となると、Mr.パンプキンが慕っているのもわかる気がした。
「有り難く頂戴するとは言ったが……いいのか? Mrs.パンプキンが書き記したとなれば、ある種形見のようなものになるだろ?」
「えぇ、勿論そうなのですが。この通りを離れる予定のない私よりも、マヤトさんのように旅をする方に差し上げたいと、ずっと前から思っていましたので。ですからお気になさらず……。それに、彼女の形見なら他にもいっぱいありますから」
「そうか……。ならば貰っておく、感謝するぞ」
少し気が引けるが、せっかくのご厚意だ。ここは貰っておこう。
まぁ単純に、この地図は欲しい。貰っておきたいといった理由が最たるものではあるが、それは口に出さないでいた。




