第六十七話③
「こんなに沢山……貰えないです」
「遠慮しなくていいわよ。これは私たちからの感謝の気持ちなんだから」
「そうだぞ嬢ちゃん。受け取ってもらえねぇ方が傷つくってもんだ」
そう言って皆はアカリに笑みを向けた。
それに応えるように、アカリも笑みを浮かべて口を開く。
「……でしたら、有り難くいただきます。とっても嬉しいです!」
「そう言って貰えて、私たちも嬉しいよ。私たちに出来る感謝の印なんて、こんなものしかないからね」
「こんなものだなんて、とっても美味しいお菓子なんですから、そんな事言わないで下さい」
「いい事言ってくれるね嬢ちゃん!」
「流石英雄様だね!」
皆はアカリを労い、讃える。
すっかり俺の元には人はおらず、アカリに支持を全て取られてしまった。
アイツは愛想がいいのに対して、俺は無愛想だからな。仕方のない事だ。貰ったお菓子も、正直あまり嬉しいとは思えない。
こう言ったところがあるから、俺は昔から反感を買っていたのだろうなと、実感する。
「マヤトさん。少しよろしいですか?」
すると後ろから、パンプキンがこちらへゆっくりとやってきた。
「何だパンプキン。1人になった俺を励ましにでもきてくれたのか?」
「励ます、ですか? あなたはそう言った事を気にする方ではなかったと思いますが……」
「わかっているな。正解だ。いちいちそんな事を気にしたりはしないのが俺だからな。……それで、だったら何のようだ?」
「明日には出発するとの事ですので、今のうちにこちらを渡しておこうと思いまして」
何のことかと首を傾けたが、パンプキンはそんな事はお構いなしに、マントの内側から何かを取り出して、それを差し出してきた。
何かもわからぬままそれを受け取り、確認する。
触り心地は紙に近い、けれど布のようにも感じる分厚さがある。それをコンパクトに丸めてあるのだ。
ここに何かが描かれているのだろうか。
少し気になり始めたところで、俺は早速それを開いた。
「これは……」
「はい。それはここ周辺を表した地図になります」
そこに描かれてあったのは、世界地図とは言わないまでも、かなり事細かに広い範囲を描かれた地図であった。
ちょうど中心地点にこの国が描かれており、眠りの孤島までもが記載されてあった。
「この世界に地図なんてもの、存在したのだな」
「数は少ないですが、描く人は確かにいます。あまりに広く、未知なる場所が多い世界ですので、世界地図とまでは行きませんが。それがあれば、当分は迷わないで目的地を目指せるようになる筈です」




