第六十六話②
「この森さえなければ、もっと早く通りから街へいけるって言うのにね」
「本当だな……。せめてこのお茂った草木だけでも除草してくれれば、もっとスムーズにすすめるのだが」
草木を払い除けながら、道なき道をただ真っ直ぐ進んでいく。本来5分ほどで歩いて行ける距離を、15分ほどかけて進まないと行けない。ここを通ることは恐らく今後はないだろうから、そこまで苦ではないが何度も通るとなるとやはり苦痛に感じ始めるだろう。
早く街と通りの交流が進んで、道が開通する事を願うばかりだ。
一応整理された道として、馬車で通った街から通りへ向かう道もあるにはあるのだが、ここからかなり迂回しなければならなくなる。
馬車ならいいかも知れないが、徒歩となると少し面倒な距離だ。こちらも同じく面倒ではあるものの、着く時間が早くなると考えれば、まだましだ。
「あっ、見えてきたわよ。パンプキンさんの家だわ」
アカリがそう言って指差した先には、確かにパンプキンの家があった。別に久しぶりに見るものでもないのに、ここ数日間が濃かったせいか、随分と懐かしい景色に思えた。
ようやく森を抜けてパンプキンの家へと向かい、部屋を覗いてみるが、中には誰もいなかった。灯りすらついていないから分かりやすい。
「祭りの準備があるって言ってたものね。通りの中心地にいるんじゃないかしら」
「祭りが行われる場所だな。少し休みたいところだが、ひとまず合流する為にも早速向かうか」
森でついた汚れを払いながら、俺たちは祭りが行われる通りの中心、最も開けた道を目指して進み始めた。
ここからだと、10分もかからない距離だ。そこまで苦労はしないだろう。
墓石のあるエリアを抜けて、住宅が立ち並ぶ場所まで辿り着く。皆祭りに向かったのか、どの店舗も灯りがついておらず、真っ暗だ。
「祭りに人が集まっているのはわかるのだが、ここら一体はやはり不気味だな。元から薄暗い場所なのに、さらに灯りが少なくなると恐ろしいくらいだ」
「何、怖いの? いつも強気なのにこう言ったものは苦手なのね」
「別に怯えているわけではない。ただ、街との違いに戸惑っているだけだ」
街は人で賑わいながら、建物も夕方だと言うのに、目障りな程煌びやからで明かりを感じさせたが、ここはその対象のような場所だ。
早朝から急に深夜になったかのような、異様な雰囲気を感じさせ。急に部屋の明かりが消えたような、戸惑いを見せてしまう。




