第六話③
「早速だが、お前達の目的を話してもらおうか」
王様の姿をしたモンスターが、俺たち2人を睨みつけるようにして、そう問い詰めてくる。
「その前にお前達が何者かを話せ。素性どころか、何の生物なのかすら分からない者の質問になど、答えるつもりはない」
俺の態度が気に食わなかったのか、辺りにいたモンスター全員が俺を睨みつけていた。
ただそれを見かねたのか、王様の姿をしたモンスターは怒りを鎮めて、自分達について話し始めた。
「我は夢喰い族の長にして王、『バーグ』である。夢を主食に生きているモンスターだ」
「それは興味深いな。モンスターなのに、どうしてそんな流暢に話せるんだ?」
「…我々は他のモンスターと比べて知能が高い。それが故に言葉も文字の執筆も可能だ」
「ふーん……モンスターにしては、本当に賢いのね」
この世界にきて、これ程の知性を持つモンスターと出会うのは初めてだ。
知恵や知性は武器になる。こいつらの戦闘能力もそうだが、今まで誰も勝てなかった事に納得がいった。
「そんな我々は今まで無益な争いは避けてきた。本来ならば、貴様達とも争いたくはないのだ」
「そうなの?ならどうして、私たちに攻撃なんか……気付かぬうちに、貴方達の気に触る事をしてしまったのかしら?」
モンスターは少し考え込む姿を見せながら、俺とは違った態度で、丁寧にアカリに質問の答えを返す。
「お前達の目的がこの島に眠る少女であると思ったからだ。実際、今も疑い警戒している」
「……貴方達にとって、その女の子はどう言った存在なの?」
「…そうだな。例えで言うなれば、女神様のような存在じゃ」
「女神?それはまた大きく出たな」
どうやらバーグ曰く、彼らモンスター達は、この島で眠り続けている女の子の夢を食べ続けて生きているらしい。
体が大きく、人の多い村や街などで夢を食する事は困難だった為、今までずっと苦労して生きてきたそうだ。
その中で餓死するもの達も少なくはなかったと言う。
そんな中、この地で夢をずっと無償で提供してくれる女の子を、バーグは見つけたそうだ。
それ以降、彼らにとって女神同然の存在となった彼女に感謝を示すように、彼らは彼女を守るようにして過ごす事を始めたそうだ。
「話はわかった。ひとまずその女の子に合わせろ」
「会ってどうするつもりだ?」
「それがね、えーと……私たちは、魔王討伐の為に冒険を始めたんだけど…」
「それとこれ、何の関係があると言うんだ?」
「俺から言わせれば、魔王討伐なんて二の次三の次なんだ」
「その一番の理由が、彼女だと?」
「その通りだ。この俺の一番の目標は、あらゆる土地で可愛い子と出会い、ハーレムを作る事。この島の女の子がもしかしたら、俺の1人目のハーレムメンバーになるかもしれない」
そう言った途端、辺りで控えていた夢喰い族達が一斉に槍を構え始めた。
アカリは俺の態度に相変わらずため息を吐いており、「本当に馬鹿ね」と嫌味を溢している。
「待つんだ皆のもの……彼女がこんなやつに靡くはずがない。合わせるだけ合わせてやろう」
「ですが王!!万が一ということが!!」
「その時は運命に従おう。散々彼女には世話になった。彼女が望むのなら、ここからの旅立ちを見守ろうではないか」
「だがこのような男となど!!」
「わかっておる!!だが、この女性のような素敵な人物と共におるのだ。根っからのクズではないだろう」
その言い方だと、まるでアカリがいなければ、俺はドクズ判定されていた事になってしまう。
その事に気がついたのか、アカリは「私と言う素敵な人間と一緒にいてよかったわね」と嫌味な顔で肩を叩きながら話してきた。
「…理由があるとはいえ、思っていたよりかは聞き分けがいいな。また適当な理由をつけて、追い出そうとしてくるとばかり思っていた」
「今もなおそのつもりだ。さっさと彼女と合わせて、帰ってもらおうとしているのだ」
「お前は正直でいいな。遠回りな会話をしなくて済む」
「お前に褒められたところで嬉しくなどないわ。早くついてこい」
ドシドシと大きな音を立てながら歩き始めたバーグの後ろを、俺とアカリはゆっくりとついていった。




