第六十五話②
突然のことに頭が追いつかなかったが、落ち着いてみれば、大まかに予想は出来る。
恐らくあの速度で落ちても問題のない、今俺が使った魔法、もしくはそれに似たものを使用できる者のみが、この場を利用していた。
そのように、誰もが利用できる施設ではなかったと考えればある程度納得がいく。
「まぁ……考えたって仕方がないわけだし、早く帰りましょ。女王様が待っているでしょうし、パンプキン通りにも行かないといけないんだから」
「それもそうだな。……どうだ御者の方、落ち着いたか?」
「え、えぇ……ご心配いただきありがとうございます、ですが大丈夫です。……早速出発致しますね」
俺たちは塔を後にする。扉を出た後、自動的に扉が閉まりながら、鍵のかかる音が聞こえた。
これらも魔法なのだろうか。
気になりながらも、馬車へと乗り込んだ。
御者はまだ少し顔色が悪かったが、早速出発をしてくれ、殆ど待たずに馬車を出してくれた。
「いやぁ……良いものを見れたし、知ることも出来た。満足だ」
「そうね……ただその分、妙に怖い思いをしたわね。貴方がいるから大丈夫だとわかってても……死ぬかと思ったわ」
「普通の者なら死んでいただろうしな……。いや、本当にそうだろうか。もしかしたら、あのまま落ちていれば何らかの魔法が発動されて、助かるようになっていたかもしれない……」
「なら試してみる?」
「……それは、無理な話だな」
ただ単にあれを設計する際、作り手の実力的にあのスピードを出す他の選択肢がなく、仕方なしにあーなってしまったのではとも考えたが、その可能性は低いだろう。
それは、その他の技術が素晴らしいものだからこそ、そう言い切れる。
自動で開く扉に、奇天烈な鍵、そしてあの塔を何千年も維持させ続けている事実、そんな事をやってのける実力者が、あの板のスピードを調整出来ないとは考えにくい。
ならば意図的にあのスピードにしたのか、わざわざどうして。
やはり、一部の人間だけが利用できるようにしたかったのだろうか。
そうだとしても、他にやりようはいくらでもある筈だ……。
疑問に疑問を重ねてしまうが、結局考えたところで答えは見つからない。今後一生、何処を探しても見つからない可能性すらあるのだ。
本来、考えたところでどうしようもないことなのだろう。
「何、さっきの塔がまだ気になるの?」
「そうだな……気になることだらけだ」
「……もしかしたら、冒険を続けて行く上で見つかるかもしれないんだし、そんなに考え込まなくてもいいんじゃない?」
「今後見つかるか……果たしてそうだろうか……」
「ない話じゃないわよ。だって、まだ冒険は始まったばかりなんだから」
「……あぁ。それもそうだな」
アカリの言葉で、少しばかり頭がスッキリしたのを感じた。
あまり深く考えずいこう、俺の目的は他にあるのだ。
この世界にいる上での暇つぶしが増えた、楽しみが増えた。それ程の認識で充分だ。




