第六十四話①
「何、こう言うのが好きなの?」
驚きと興奮が顔に出てしまっていたのか、アカリに心情をよまれてしまったみたいだ。
「正直、かなり興味を惹かれている。こう言ったものには、昔から浪漫を感じてならないんだ」
「浪漫ね……」
「何だ、お前はこう言ったものに興味がないのか?」
「悪いけどそうね。昔からこう言ったことにはあまり関心が持てないわ。男の子ってこう言った未知なる何かに惹かれる傾向にあるけど、貴方もそうなのね」
「寧ろ惹かれない理由がわからない程だ。女王には感謝しないとだな。こう言ったものがこの世界にある事を知れたのは収穫だ」
「何、これからこういうのも探しながら旅をするの?」
「いや、旅の目的を変えるつもりはないが、旅の途中に小耳に挟んだら、少し寄ってみたい。新しい楽しみが増えた、その程度だ」
俺はある程度辺りを見渡した後、満足して馬車に戻ろうとした。その時に再び御者が話しかけてくる。
「それでは、外装も見られたようですし、続いて中に入ってみましょうか」
「何だ、中に……? てっきり帰宅するものだと思っていたが……そもそも中になんて入れるのか?」
「本来は禁止されているのですが、女王様のご厚意で鍵をお預かり致しました。私も内部の説明はお聞きしましたが、実際に入るのは初めてです」
まさか中に入れるとは思っておらず、動揺と興奮で顔がニヤつき始めているのを感じた。
「貴方もそんな顔をするのね」
「そんな顔……?」
「ええ、まるで純粋無邪気な青年のような表情よ」
「随分と好印象だな……いや待て、いつもはどんな印象を持って俺の表情を見ているんだ」
御者についていくと、時計塔の裏側に小さな穴があることに気がついた。
その穴は俺の身長の丁度中心ほどの高さのところに空いてあり、意識しなければ気にもならないほどの大きさだ。
そこに御者は、無理に鍵を押し込んだ。
そんな雑なやり方で大丈夫なのだろうか、そう思って見ていたが、押し込んでいくうちに見る見る鍵がその穴のサイズに適応して、中へ中へと入っていくのを確認できた。
「何だ、どう言った仕掛けだ?」
「物体の形をこのように変えさせて、その術者がおらずとも、このものだけでそれが発動できる魔法……そうなると、考えられるのは今は使われなくなった魔法なのでしょう」
「今は使われなくなった魔法?」
「ええ、昔から魔法は発展と進化を繰り返しておりますが、その過程で失われていった魔法も多く存在します。恐らくはその一つかと……」




