第六十三話②
少しして、馬の蹄の音がこちらに近づいてきている事に気がついた。
視線をそちらにやると、俺は思わずため息を吐いてしまう。
「ヤケに豪華だな……」
「ほんとにね……」
俺たちの前に止まったのは、国王ですら乗る事を躊躇するであろう程の豪華な馬車だった。
黄金で塗り固められた外装と装飾品、赤く高級寝具のようなクッション製を持った内装、何処までもこの国らしい馬車だなと感心すらしてしまう。
「お待たせしました。目的地は伝えてありますので、どうぞお乗り下さい」
これら女王からの最大限の感謝を込めた行いなのだろう、澄んだ瞳を見ればすぐに分かる。
「女王、お前は来ないんだったか?」
「はい。ご一緒させていただきたいのですが、仕事がございますので……」
せめて女王が乗れば、部外者である俺たちがこんな馬車に乗っていても違和感が無くなると思ったが、……そうかついてこないのだったな。
正直、「こんな派手な物に乗れるか」といいたいところではあるが、もう面倒である為ここは好意を受け取る事にした。
「では行くかアカリ。何処に行くのか知らんが」
「それが楽しいんじゃない。それに、女王様が選んでくれた場所なんだから間違いないわ」
「ご期待に添えると思います。では、いってらっしゃいませ」
昨日寝たベッドよりも柔らかい椅子へと腰掛けて直ぐに、扉は閉まって出発した。
以前乗った馬車よりも揺れはなく、乗り心地がとても良い。
「しまったな、どれ程で着くのか聞き忘れていた……」
「もう昼過ぎだし、そこまで時間のかかるところではないんじゃないから。ここなら疲れないし、ゆっくり到着を待ちましょ」
確かに先日、街を歩き回っていた事を考えると、今の環境は極楽と言えるだろう。
考えるのも疲れた事だし、大人しく到着を待つ事にするか。
窓から街の風景をボーっと眺めながら、目的地に到着するまでの間、俺とアカリはこの街での出来事を話して時間を潰す事にした。
上がる話題は苦労話ばかりだが、全て解決した今となっては、幾つかは笑い話になっていた。




