第六十一話③
アカリの言っているその場所とは、俺とアカリが戦うのに丁度いい場所を探している際に見つけた、人気の少ない場所を指しているのだろう。
せっかく戦闘しても誰の迷惑にもならない、良い場所を見つけたのに無駄に終わったと思っていたが、ここに生きてくるとは思いもしなかった。
「確かに……そこなら誰も文句は言わんだろうし良いかも知れんな」
「そうですね。栄えている場所から少し離れているのが難点ですが、それも逆に言えば悪目立ちせずに済むとも考えられますし、いいかも知れません」
2人ともアカリの意見に乗り気の様子だ。
アカリは視線で「いいアイデアでしょ?」と言わんばかりにドヤ顔を向けてくる。
鼻につく顔だが、この発想自体は嫌いではない。あの場所も探したかいが生まれたと考えれば、かなり良く思えてくる。
「ですが、皆さん。肝心のそこに出店する方に心当たりはあるのですか? 通りの方も街の方も、自分から名乗りを上げて、そんなリスクを負ってくれる方なんて……」
女王の意見は最もだが、その意見には直ぐ様パンプキンが返した。
「それなら問題ありません。始めの方は、私が中心となって店を出せば良いのです」
「なるほどの。国民の人気を獲得しているパンプキン殿が出店してくれるのであれば、客足も途絶えんだろうしな」
話が纏まり始め、空気は最初とは比べならないほどに軽くなっている。
このまま進めば、本当に街とパンプキン通りは、近い将来良い関係を築けるようになるかも知れない。
「ではひとまず、今のアイデアを実行に移すと言う事で宜しいか? パンプキン殿」
パンプキンに質問を投げつけた国王だったが、その際の表情は少し硬いものとなっていた。
やはり、まだ2人の信頼関係が築けていない部分が明らかに露呈している。
上手い事話は進んでいるものの、この関係はなるべく早く、改善に繋げていかないといけない課題となるだろう。
「はい。ひとまずですが、先程のアイデアで話を進めましょう」
「本当か!?」
「……はい。ですが、まだ私は国王様を完全に信用しきった訳ではありません。今はまだ、アカリさんを信じてこの話を飲み込んだに過ぎないのです」
パンプキンの正直な言葉に、国王は怯んだ様子を浮かべたが、それでも震えながら言葉を返した。
「今はまだ、それでも構わない。そうなってしまったのは我が原因なのだ、謝罪しても仕切れない……。だが、このまま信頼を得られないまま、関係を続けるつもりもない。必ず近い将来、パンプキン殿からの信頼を得て見せる。我にとってそれは、街と通りを1つにするのと同じ程、大事な事なのだ」
国王の言葉に、パンプキンは言葉を返しはしなかったが、それでも何処か安堵しているように見えた。
それは、通りの未来は明るいと感じる事が出来たからなのか、国王と良い関係を築ける確信を得たからかは分からない。
だが、パンプキンの根底にあったであろう国王に対する不信感は、薄まっているように思えた。




