第五十九話②
とはいえ、「恥ずかしいから謝りません」なんて大人がして良いことではないだろう。そんな事は、2人も百も承知の筈だ。
だが2人が今までそれが出来ていなかったのは、それを理解していながらも、再び喧嘩を繰り返していたからだろう。
ならば、アカリのこの提案をきっかけに仲直りを成功させて仕舞えば、今後このような争いが起きたとしても、前よりかは気楽に仲直りが出来るようになる。少なくとも、衝突し続ける事は無くなる筈だ。
喧嘩をしない事がベストではあるのだろうが、それはまた後の話だ。
「ほら、ちゃっちゃと済ませて下さい。お2人とも大人なんですから」
大人である立場、さらに言えば上に立つ者の立場で「仲直りしてください」なんて言われるのは恥ずかしくてたまらないだろうな。
現に2人は躊躇うような仕草を見せている。
このまま時は進んでいき、また待ち時間が増えるのだろうと思った次の瞬間、予想外な事に、2人はほぼ同時のタイミングで謝罪をして見せたのだ。
「ごめんなさい…言いすぎてしまいました」
「本当に申し訳ない。こんな事、本当は言いたくなかったのだ」
思っていたよりも謝罪するのが早かった事に疑問を感じたが、2人とも内心では早く仲直りしたいと思っていたのだろうと思えば、なんとなくだが納得がいった。
謝罪後、2人は小っ恥ずかしそうにしながら目を逸らしている。




