第五十八話②
アカリの言葉が図星だったのか、国王は悲しげにしながら顔を歪ませる。
そう「悲しげに」だ。……何処か妙だぞ。
以前の国王なら、ただ苛立ったかのように顔を真っ赤にして、アカリに罵倒を返していただろう。
それが今や、言葉を返すことすらせずに、まるで反省する子供かのように俯いている。
パンプキンもその様子に疑問を感じている態度をとっていたが、最も驚きを見せていたのは女王だ。
それもそうだろう。
国王の直ぐに怒りを見せるあの態度は、話を聞く限りは昔からそうだったみたいだ。
それなのに、急にその態度変えてきたのだ。不思議というよりも、驚愕といったような態度をとるのも無理はない。
「何といいますか……調子が狂ってしまいますね。どうしたのですか国王様。私としましても怒りを抑えてくれるのは有り難いのですが、そんなに急に態度を変えられると少し奇妙に感じてしまいます」
「何が奇妙だ! それが国王に対する、!」
「国王様! 話……聞いてましたか?」
アカリの怒りに満ちた冷淡な瞳に、国王は再び言葉を飲み込んで黙り込んだ。
「国王のこの態度……一体何をしたんだアカリ?」
「特に何もしてないわよ。ただ、思ったことをぶつけてやっただけだって、さっきもいったでしょ?」
ならばその放った言葉が、余程国王に深く突き刺ささったのだろう。
そしてそれが少しばかりトラウマとなっていることが伺える。国王は少しではあるが、アカリに対して、怯えた態度をとっているからな。
国王相手にここまで堂々とした態度をとりながら、相手に深く刺さる言葉を放つとは。それは悪役令嬢としての力が生きてきたのか、はたまたアカリ本来の性格なのか……いや、そのどちらもだろうな。




