第五十六話③
何かを動かす音で目を覚ます。
どうやら昨日、アカリと会話をした後直ぐに眠ってしまったみたいだ。
布団もかけないで眠ってしまっていた為、少し肌寒い。
重い瞼をゆっくりと開けて横を見ると、窓を開けているアカリの姿があった。この音で俺は目を覚ましたのかと思いながら目を擦る。
「あら、ようやく起きたの? 随分と寝てたみたいだけど」
「俺より先に起きてたのか。なら布団をかけて欲しかったがな」
「貴方が布団を踏んで寝てるから、かけられなかったのよ。ってそんな事どうでもいいわ、早く準備してちょうだい。女王様とパンプキンさんは既に部屋で待ってるみたいよ」
「何で知ってるんだそんなこと?」
「さっき女王様がわざわざこの部屋まで来てくれたのよ。早く準備してちょうだい」
時間を見てみると、昼前になっている事に気がついた。寝過ぎたとは思っていたが、まさかここまでとは……半日以上寝ていることになるぞ。
既にパンプキン達が待っているのも納得の時間だ。
俺は慌てて支度を済ませてアカリと共に部屋を出る。
あくびをしながら廊下を歩いて女王の部屋へと向かっている最中に、昨日アカリと話していた事をふと思い出した。
「そう言えばアカリ。俺たちが見つけた人目のつかない場所の利用方法について、昨日何か話そうとしていたが、結局何だったんだ?」
「あーその事ね。あれは…うーん、今話すのは面倒ね……また後で話すわ。国王様を交えてね」
「国王? 何故あの馬鹿が話題に出てくるんだ?」
俺がそんな疑問を投げかけたところで、女王の部屋へとちょうど辿り着いた。
「また後で話すって言ってるでしょ」とはぐらかされてしまい、結局話は後回しになった。
何なんだ一体、出来ればあの馬鹿とはもう関わりを持ちたくはないのだが……気にはなるものの、アカリが答えてくれない以上、考えたところで仕方がない。
考えることは後回しにして、女王の部屋の扉をノックし、扉を開ける。
「おはようございますマヤト様、疲れは取れましたか?」
扉を開けると、椅子に腰掛ける女王とパンプキンの姿が目に入った。
2人ともティーカップを片手に、笑顔で俺たちを迎え入れる。
「おかげ様で随分と疲れが癒えた。待たせてしまったみたいで悪いな」
「お気になさらず、マヤトさんは誰よりもお疲れになっているでしょうから、仕方のない事です」
俺とアカリは用意された席に座り、メイドに紅茶を淹れてもらいながら昨日のことの話を始めた。




