第五話③
「なんだかフワフワして……何かに包まれてる感じがするわ」
「全身を保護するような魔法だからな。身に何かを纏ったような感覚になるんだ」
状態異常を防ぐ魔法を自分たちにかけた事で、ひとまず島に上陸する事が可能になった。
これで上陸して直ぐに寝てしまう事はなくなっただろう。
早速俺達は砂浜に船を乗り上げさせて、島へと上陸する。
「『眠りの孤島』か…ここから見る限りでは、管理されていない、ただの島に見えるな」
「そうね。ここでまさか眠り続けてる女の子がいるだなんて、考えもしないわね」
島の外観は、木々が生えている事が分かるだけで、特に変わったところは見当たらない。
中に進むにつれて、何か変わったものに巡り合う事になるのだろうか。
「それで、どうするの?早速中に入るわけ?」
「そのつもりだ。この島に住まうモンスターの正体も確認しておきたいからな」
俺達は早速森の中へと進んでいく。
適当に目についた、木々が生えていない入りやすそうな場所から、俺達は森に入って行った。
中は先日大蛇を討伐した場所と変わりはなく、ただ木や草が生えているだけで、何か特徴が見受けられるものはない。。
本当にこんなところに、女の子などいるのだろうか。
「ちょっと、あれ見て」
そう言ってアカリが突然、少し先に向かって指をさし始めた。
何やら驚いたリアクションをとっている事から、何かを見つけた事がわかる。
俺はアカリの指先を辿ると、森の中に随分と開けている場所を見つける。
「……何だこれ?明らかに自然のものではないな」
その場所は見るからに意図的な、サークル上に開けた場所があった。
俺達は警戒しながらそこに入って、見渡すように辺りを確認してみると、ところどころに複数の道が確認できた。
この先に何があるのかはわからないが、誰かがいる事は確定した。
「いよいよ警戒しながら進まないとね」
「そうだな…俺の側を離れるなよ」
「カッコつけてるんじゃないわよ…まぁでも、そうさせてもらうわ」
俺達はまるで恋人のような距離感で先へと進んでいく。ただ場所はデートスポットなどではなく、何が起こるのかわからない未知の島だ。
とてもドギマギとした気分にはなれない。
いくつかある道の中で、1番道幅の広い箇所を選んだ。
何かあった時に大きく動けると思ったからだ。
「貴方の予想としては、どんなモンスターがいると思ってるの?」
「難しい質問だな…俺が今まだ読んできた作品では、森で出てくるのは大抵オークかゴブリンだ」
「でもそれって、ゲームとかでは雑魚モンスターの扱いになってない?」
「そうだな。そう考えると、大型の昆虫型のモンスターか、熊などがモチーフの大型モンスターかになってくるな」
2人でここに住まうモンスターの話をしていたところ、奥の方から地響きのような音がなり始めた。
身体の奥底を揺らすほどの爆音、何か底知れない者が先にいるみたいだ。
「早速、私たちの予想が合ってるか分かりそうね」
「随分と早い答え合わせだったな」
アカリは俺の後ろに身を隠して、逆に俺は少し前に出た。
今俺たちはある程度広い道に立っているが、戦う事を考えると十分なスペースを確保出来ているとはとても言えない。
俺はしっかりと先程音が聞こえた先をじっと見つめて警戒する。
いつくるのか、いつ攻めてくるのか、警戒初めてようやっと1分程が経過した途端の事、辺りの森が途端に動いた。




