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第五十五話①

「私の魔法を貴方も使用して、魔法効果を相殺させたと言う事ですか?」

「その通りだ。考えればわかる話だろ」


 王国騎士長の言う通り、俺は奴と同じ、魔法を使用出来なくする魔法を使用する事で、その魔法効果を相殺させ、新たに魔法を生成して見せたのだ。

 

 元々はこのような卑劣かつ面白みにかける魔法を、俺は取得していなかったわけだが、コイツと戦闘を交えた上で、いざと言うときの為を考えて使用の仕方を記憶しておいたのだ。

 出来れば使用したくはなかったが、やはり使わなければならない機会が訪れた。屈辱的ではあるが、コイツを驚かす事が出来たのだ。少し気分も晴れた事だし、それで良しとしよう。


 現状起きている事を全て話終えたわけだが、王国騎士長は至って冷静な態度を続ける。


「全ての魔法を使用出来るというのは…どうやら冗談では無さそうですね」


 全ての魔法を使用できる。こんな事を聞いたとしても、本来なら納得なんて出来るはずがない上、馬鹿にされているのではないかと怒りを露わにする者もいるだろう。


 だが、俺は王国騎士長の前であらゆる魔法を使用してきている。国王と初対面の際もそうだが、その後王国騎士長と再び出会ってしまった時、そして先程の魔法もそうだ。

 それらを見ていた事から、俺の魔法の正体を聞いたとしても、直ぐに納得する事が出来たのだろう。


「何なら、冗談でない事をこの場で試してやろうか?」

「いえ、結構です。証明なんてしなくても信じますよ。寧ろ納得した程です、あれ程の魔法を使用していた意味がようやく分かりました」

「理解してくれたのならよかった。ついでと言ってはなんだが、俺に勝てない事も理解してほしいものだが」

「それも理解しましたとも、そもそも相手になっていなかったみたいですね」


 案外思っていたよりも諦めがいいなと思った最中、王国騎士長は途端にこちらに身を寄せてきた。

 咄嗟に魔法を発動させたが、咄嗟のことだった為使用しそうになったのは高威力の魔法だった。これでは奴を殺してしまいかねない。

 俺は悩んだ末に魔法を抑え込んで、奴が向かってくるのを受け止めた。

 王国騎士長は俺に飛びついてきたかと思えば「より離したくなくなりました」と、そう言ってきたのだ。


 俺に勝てない事を理解したからと言って、諦める事になるわけではないみたいだ。


 どうしたものかとアカリを見つめるが、アカリは面倒くさそうに、「そちらで解決して」といったジェスチャーを送ってきた。

 もう万全は尽くしたと言うのに、これからどうすれば良いのか…。

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