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第五十四話③

 手を相手に掲げながら、小規模のレーザーのような鋭い光線を王国騎士長に向けて放つが、それは何なく避けられしまう。

 並の人間なら避けられる筈のない速度だが、コイツは難しい顔すら浮かべず、何なくそれを避けたのだ。


 次、そのまた次にも遠距離の魔法を使用して攻撃を試みるが、どれも奴に触れる事はなく、避けられてしまう。

 避けられてしまうと言うことは、それがコイツの後ろやら何処やらに向かって放たれたことになってしまい、既に城の内部はボロボロになってしまっている。

 そもそも城を破壊しないようにと制限をかけていたのに、これではいけない。


「何ですか? 私に攻撃を当てることすら出来ないのですか?」


 いい加減腹が立ってきた。

 攻撃が当たらないことにも、奴の態度にもだ……。


 遠距離の魔法では、攻撃を当てることは難しそうだ。俺はある事を決心して、悩んだ末に王国騎士長の元へ攻撃を仕掛ける。


 魔法で生成した剣で、奴に斬りかかりにいったのだ。

 

 自らの懐に飛び込んでくる事を好奇のような眼差しを向けてきた王国騎士長だったが、即座にその表情は失われてしまう。


「……何故魔法を使えているのですか?」


 俺は奴と手を軽く伸ばせば届く程まで距離を詰めていた。コイツの魔法、つまりは魔法を使用出来なくなる魔法の射程圏内だ。


 奴は遂に困惑した表情を浮かべながら、顔を曇らせた。奴の俺にとって優位に立てる、唯一の強みだったからだろう。


「どうした? 随分と馬鹿そうな顔を浮かべているが?」

「質問をしているのは私の方です……! どうして、私の魔法が、」

「簡単な事だ、お前は自惚れ過ぎたんだその力に。あたかも自分しか使用出来ないと思っていたのだろ?」


 アカリは既に何が起きているのか理解を示している事から、退屈そうに見つめてきている。


「お前がその魔法を使えるように、俺もその魔法を使用できる。というよりも、俺は全ての魔法を使用できるんだ」

「馬鹿な事を……え? まさか本当なんですか」


 疑いを見せたかのように思えたが、アカリの様子を見てから直ぐに信じる素振りを始めた。

 アカリの「マヤトの魔法の下は聞き飽きたわ」と言った態度が、信憑性を増させたのだろう。


「嘘かと思うかもしれないけど事実よ。まぁ、諦めなさい、貴方じゃ勝ち目がないわ」


 まだ完全に信じきったというわけでは無さそうだが、王国騎士長は額から汗を流し始めた。

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