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第五十三話②

「貴方が、マヤトさんのお仲間の……」

「アカリよ。貴方達、こんなところで何してるの?」


 2人は一触即発と言ったように睨み合う。

 女の子同士の和やかな会話とは程遠い、殺伐とした、殴り合いでも始まるのではないかと言った、ピリついた空気がこの部屋を包み込む。


 王国騎士長から脅されている為、元から口を開くつもりはないが、もし脅されていなかっとしても、この場では口を出せそうにない。


「アカリ殿ですか、私の名前は『アース・クレイア』どうぞアースとお呼び下さい」

「では改めて、アースさんにお聞きするわ。ここで何をしていたの?」

「見て分かりませんか? マヤトさんをパーティに勧誘していたのですよ」


 見てわかるはずがない。

 コイツは現状がどう見えているんだ。


「パーティに勧誘? マヤトは私とパーティを組んでいるのだけど?」

「えーお聞きしております。どうやらマヤトさんは貴方の事を気に入っているらしく、パーティを解消するつもりはないとおっしゃるんですよ」


 いらぬ事を口にするなと叫ぼうとしたが、その行動が瞬時に王国騎士長にバレてしまったらしく、ギョッとこちらを睨みつけられてしまう。

 俺は言葉を飲み込みながら、ゆっくりと目を逸らす。


「それは貴方よりも、私の方が余程まともだからでしょ? 見たところ体で誘惑しようとしたみたいだけど、やり方を間違えたわね。マヤトは女の子と手を握るだけで気絶しそうになる程の、ピュア男なのよ」


 流石の俺も気絶まではしないが、ある程度認めなければならないところがあるのが腹正しい。

 ……いや、認めてたまるか。手を繋ぐことぐらいなら……可能だ。


「どうやらそのようですね…。ですのでやり方を変えようと思いまして、そんなところに貴方が現れてくれたのです。いやぁ、実に都合がいい」


 俺も、アカリも何のことなのか分からず首を傾げた。

 すると意気揚々と王国騎士長はこんなことを言い始めたのだ。


「マヤト殿がパーティを解消しようとしないのであれば、仲間である貴方が、マヤト殿にパーティを解消するように申しつければ良いのです」


 何を言い出すのかと思えば、馬鹿な事を。

 アカリが俺とパーティを解消したがる筈が……したがる筈が……ないよな?


 よく考えれば、俺はよくアカリに不満を吐露される。

 何度愚痴を吐かれてきたのか、俺自身も吐いてきたのかわからない。

 まさかとは思うが、コイツの申し出に「確かにそうね。パーティを、解消するわ」と2つ返事で答えたりしないだろうか。


 途端に不満が積もり始めて、俺は額からダラダラと汗を流し始めた。

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