第五十一話①(アカリ視点)
「臆病であることを悪いことだとは言わないわ。ただ、それを理由にいつまでも立ち止まっている事は、良い事だとは思えないわ」
「……何が言いたいのだ?」
「今貴方の目の前に転がっている状況は、とてもシンプルよ。対話を望んでいた相手のピンチ、助ける事が出来れば対話が実現される可能性は高くなる」
「だが、対話の為に……命まで賭けられるだろうか……」
何を言っているのかしらと、弱気な言葉を口にする国王に、私は詰め寄って言葉を放つ。
「そして何より、貴方の国の民がピンチなのよ? 1つの街をずっと守って繁栄させてきた、そんな男のピンチを国王である貴方が見過ごすの?」
私は感情論で説得に出る事にした。
理屈をこねて交渉する手もあるが、国王には理由というよりも、もっと曖昧な、やる気やキッカケが必要なのだと感じたからだ。
すると国王は拳をギュッと握って立ち上がり、戦場に赴く騎士の様な顔つきで、広間の出口へと向かい始めた。
「感謝するぞ侵入者。お主のおかげで我の行動理念が何なのかようやく思い出せた」
そう口にする国王の姿は、何か重しが払われたような清々しい姿となっていた。
「確認の為にも一度聞いておこうかしら、貴方が動く理由はなんなの?」
「民のためだ。怒り、悲しみ、嘆き、迷い、苦悩する。それらは全て、民のための行動である。複雑化して難しく考えすぎていたのだ……ようやく柔軟に行動が出来そうだ」
国王は近くにいた兵士数人に、城の目の前の広場に全員が集まる様に指示を出した。
それに返事をした兵士たちは、急いではけていく。
これで城外は市民達に捜査を任せて、城内を兵士の皆様に探してもらう事ができる様になる。
パンプキンさんも、マヤトもどちらも見つける事が可能になる筈だ。
とはいえ、皆に任せっきりにするつもりもない。私も探して、2人を見つけ出さなければ、そう思い行動を開始する。




