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第四十八話③(アカリ視点)

「この場所に迷い込んだ? そもそも一般の兵士はずっと先のエリアから、立ち入りが禁止されておるのだがのぉ…」

「はい。それすらも気付けぬほどに迷っておりました」

「……そもそもこの建物自体、許可がなければ一般の兵士は入れないわけだが」

「許可をいただいたのちに迷ってしまいました」

「許可を得る前に、屋敷内の地図を覚える様に指示したはずだが」

「……」


 いよいよ言い訳するのにも限界が来てしまった。……いや、2つ前の質問の時点で既に怪しさは全開だっただろう。


 どうしたものか……逃げようかしら……。


 そんな事を考えた途端の事、国王は「まぁ良い」と言葉を溢した。

 はっきり言って自分の耳を疑ったし、「いや、いい事はないでしょと!」と言葉をぶつけてしまいそうになった。


 恐らく私が侵入者である事は、国王も気がついている筈だ。

 もっと怒鳴るなり、慌てて兵士を呼ぶなどの行動に取ると思っていた為、そのギャップに驚かされてしまう。


「……兵士を呼んだりはしないのですか?」

「あー、見たところ何か城の中で悪い事をしでかしてやろうとしてる訳でもなさそうじゃしな。そもそもここに入って来れておるという事はアイツの……女王の差金なんじゃろ」


 そこまで見破られているとは、私は驚きのあまり目を見開いた。

 明らかにダークとパンプキンさんとの対戦中に見せた、あの無様な姿とは違い過ぎる。

 落ち込んでいるから怒る気力もないというのならわかる気もするが、それよりも何処か冷静さというか、聡明な雰囲気を醸し出しているのだ。


「ただ侵入者は侵入者じゃ、一つ我のいう事を聞いてもらうぞ」

「……何をですか?」

「愚痴に付き合ってくれ。我にとって嫌なことが立て続けに起きてな。もうストレスで気分が落ち込みっぱなしなんじゃ」


 何を要求されるのかと思ったら、単純かつ簡単な話で、肩を撫で下ろした。

 最初と印象は違うとはいえ、まだ少しも信用は出来ていない為、条件を提示された時は「遂に正体を現したな」と焦りを見せてしまった。


 国王は玉座から少し離れたところに置いてある椅子に、ゆっくりと腰掛けた。

 その椅子の前にはテーブルが配置されており、それを囲んで椅子がいくつか配置されている。

 私は辺りに人がいない事を確認した後に、国王の向かい側の席についた。


「安心するのだ。別に誰が来たところで、我が許可したと言えば済む話。何も問題にはなるまい」

「そうですね……とは言え立場的に落ち着かないと言いますか……」


 私は今侵入者だからね。

 まさかその様な立場で、国王とこの様に話す機会が訪れるとは考えてもみなかった。

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