第四十七話①
「……初めてだ、自分の耳を疑ったのは……すまないが、もう一度話してくれるか?」
「何度でも言ってあげます。私の仲間になりませんか? 私と貴方で、パーティを組むんです」
どうか自分の耳の不具合であって欲しいと願ったが、どうやら本当にコイツは、「私の仲間になりませんか」そう口にしたみたいだ。
どう言った風の吹き回しなのか考えてみても、答えは一向に出てくる事はなく、俺の頭を混乱させる。
俺はてっきり、コイツに嫌われていると思っていたのだが、案外好かれていたのか? ……いや、そんな筈がないか、嫌われはしても好かれるような行動はとっていないからな。
こちら側で考えていても仕方がないと思い、俺はダメ元で直接本人に聞いてみる事にした。
「この件に関しては聞いてもいいのか? ……どうして、俺の仲間になろうと思ったんだ」
「そうですね…貴方は気に入りませんが、その魔法の力は本物の様子、我々が手を組めば魔王を倒す事だって無理な話ではありませんから」
無理な話も何も、俺が本気を出せばいつでも魔王を倒す事は出来る。
コイツの力など必要ないわけだが、確かにコイツと俺が手を組めば、今後敵はいないと考えてもいいほど強力なパーティとなるのも確かだ。
「何だ、お前は魔王討伐に興味があるのか?」
「当たり前でしょう。それは人間誰しもが一度は思い浮かぶ夢であり、魔王を討伐した勇者になることが、何よりもの憧れなのですから」
この世界の人間と、これまで少数ではあるが関わってきたわけだが、確かにそう言った傾向にある人間は多くいた。
俺が元々いたパーティも、小さい頃から魔王討伐を夢見ていた者たちで構成されていたパーティだったのも、記憶にある。
書物でも、魔王討伐や勇者になる物語などは、人気が途絶える事のないジャンルだと聞いたことがあるくらいだ。
「お前の話はわかった。だがな、俺はお前とパーティを組むつもりはない。既に俺には仲間がいるからな」
「どうしてですか? 別に私1人が仲間に加わったところで問題はないでしょう?」
「大問題だ。アイツと一緒にいるだけでも充分疲れるのに、更にお前のような奴が仲間になるなんて、死んでもごめんだ」
「ならばそのお仲間とおさらばすればいいだけの話ではないですか? その者よりも、確実に私の方が実力がありますし、その他の魅力もある筈です」
そう言いながら艶かしく王国騎士長は体を擦りつけてくるが、緊張や魔法を制限されている事によるストレスで、コイツの魅力など然程も感じる事はなく、代わりに頭が煮えくりかえりそうになっていた。




