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第四十六話④

「……貴方なら、簡単に仲間を売ると思っていましたが、案外そんな事はしないのですね」

「俺を何だと思っているんだ。仲間を売るだとか、そう言ったダサい事をするつもりはない」

「なるほど……仲間の為に情報を売らないのではなく、自分のプライドの為という事ですね。やはり貴方らしいです」


 コイツが俺の何を知っているのかと腹が立ってきたのと同時に、ここまで自分の印象が悪くなっている事に、少しばかり落ち込みを覚えた。


「とはいえ、話してもらえない限り、貴方を解放するつもりはありませんよ。勿論、貴方の質問に答える事もありません」

「……とはいえ、俺はアイツのことを話すつもりはないぞ。諦めろ」

「ならば直接彼女を捕まえますよ? 貴方と違って彼女は力を持たないでしょうし、簡単に捕まえられます」


 王国騎士長は軽々しく、そんな脅しを仕掛けてくる。騎士とは思えないその言動に呆れながらも、俺はアカリについて考えた。


 確かにアイツは力を持っていないどころか、魔法すら使えない。

 体力も人並み程度、この世界で言えば弱い部類に入るだろう。


 だがコイツは知らないのだ。


 奴の力は、そう言った物差しでは測れない不可思議なところにあるという事を。


「やれるものならやってみろ。俺ですら、アイツを捕まえるのは困難というものだ」

「……そんな発言で、私を騙せるとでも思っているのですか?」

「試してみればわかる。俺がアイツを庇うとでも思っていたのかもしれないが、そんなことする必要はない。アイツなら自分のことは自分で何とかするだろうからな」

「……随分と信頼しているのですね」

「まさか、旅を共にする仲間として…侮ってはいないだけだ」


 望んでいた返答ではなかったらしく、王国騎士長は大きくため息を吐きながら、めんどくさそうに頭をかき始めた。


 そしてそのまま何かを諦めたような軽い口調で、再度話を始める。


「では仕方がありません。これは質問ではなく提案です。半分強制のつもりですが、ひとまずお聞きします」


 そう言いながらグイッと俺の元へ体を近づけて、椅子の手すりにつかまり、顔を後少しで触れるところまで近づけながら、口を開いた。


「貴方と共に旅がしたい。私と仲間になりませんか?」


 予想外の提案に、俺の頭の中は真っ白になった。

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