第四十六話②
「恐れる事はありません。私はただ、話がしたいだけなのですから」
「これがただ話がしたい奴の取る行動か? 誘拐に監禁、どれも話をするだけといった理由で、片付けられる内容ではないぞ」
「でもマヤト殿、私が面と向かって「話がしたい」と言っても、逃げるてしまうでしょ?」
反論が思いつかないのは、それが事実だからだろうな。
とはいえここまでやるのも間違いだとは思うが、コイツの行動理由は分かった。
「質問には答える。だからせめて、先に俺の質問に答えてくれないか?」
「質問をするのは私が先ですよ。貴方は質問をするだけして、その後答えないと言った事をしそうなので」
共感のあまり、「それもそうだな」と言ってしまいそうになった。
「では早速お伺いします。そうですね…先ずは貴方がどうしてそこまで強いのか、それを教えていただきたいですね」
それは、この国に来て関係を持ったパンプキンにすら話していない事だ。
こんなヤバい女に俺の力の根源を知られるのは、危険というか、何というか嫌な予感がしてならない。
「言わなければどうなる?」
「知りたいですか?」
何よりも恐ろしい答えが返ってきた。
もう話たくないと思ってしまうほど、コイツとの会話は疲労を感じてしまう。
嫌ではあるが話すしかないだろう。話したところで誰かに言いふらすってわけでもなさそうだが、だからと言って知ってどうするのか、それがわからない以上不安でならない。
王国騎士長はじっと俺を見つめている。
視線から、「早く話せ」と言われているような気がしてならない。
…話すとするか。
考えた末に、話す他の選択肢が見つからず、渋々話す方を決意した。
「俺は……こことは違う世界から来たんだ。元の世界からこの世界へと移る際に、女神を名乗る人物から魔法の力を貰った。それが俺の力の正体だ」
「……にわかには信じ難いですね。ふざけているようでしたら、どうなるのか……いや、それはないですね。貴方にそれ程のユーモアがあるとも思えませんし」
「言ってくれるなクソ女」
「ほら、罵倒にも独創性を感じませんよ」
コイツ……俺がこんな状況に陥っているからとはいえ、調子に乗りすぎではないだろうか。
もう後先なんて考えずに、今この場を魔法でめちゃくみゃにしてやろうか。
そんな野蛮な考えが頭に浮かんだが、当然実行に移る事は出来ず、引き続き相手の問いかけに答え続けることが確定した。




