第四十五話③
「ちょっと、随分と進んだけどまだ進むの?」
「いや、後数十メートルほど進めば着く筈なのだが……」
本来とは違った道を選んだこともあり、後どれほどで、目的である広間に着くのか分からなくなってしまった。
いらぬ事をしてしまったな、多少不快でもあの道を進むべきだったかも知れない。
俺はここである事に気がついて、慌てて辺りを見渡し始める。そんな行動を不審に思ったのか、アカリは不気味なものを見る様にして、俺をのぞきこんでくる。
「どうしたのよ、何かに取り憑かれたの?」
「そんな筈がないだろ…ただ、この城はここまで暗かったか?」
辺りを見渡すと、先程いた位置と比べて明かりが明らかに暗くなっている事に気がついた。
ライトなどの灯りではなく、日の光がこちらに届いていないようなのだ。
確認してみると、窓には何か板のような物が貼ってあり、このエリアには日光が届かない様になっていた。
妙なのは、その板についてだ。
比較的板は新しい様で、少しも劣化がみられない。 その上、まるで外からこの場所を見えないようにしているとも捉えれる程、城の中からきっちりと窓を塞いでいるのだ。
「…理由は分からないが、ひとまずここを離れよう。あまりにも不気味だ」
「貴方がそう言うのならそうしましょ、私は何も感じないけど」
「それは、あまりに危機管理にかけるのではないですか? マヤト殿のご友人殿」
俺たちの会話に自然と溶け込む様に、第三者の声が真後ろから聞こえてきた。
突然の事態に俺とアカリは少し硬直した後、直ぐに後ろを振り返る。
聞き覚えのある声だと思ったが、視覚で捉える事で誰だかはっきりとわかった。
王国騎士長だ。まさか、自分から姿を現すとは、思っていなかったわけではないが、可能性は低いと思っていた。
どうして自らこちらにやってきたのか、やはり今回の件はこいつが犯人なのだろうか。
あらゆる憶測が俺の中で飛び交ったが、それらの答えを導くよりも前に、俺は彼女に呆気なく捕らえられてしまったのだ。




