第四十三話③
いくらパンプキンの居場所の手掛かりを掴めないとはいえ、犯人すらまだ分かっていない状態で、街の人たちに協力を促すのは正しい判断なのか、仮にパンプキンが何者かに捕らえられていたとして、それを見つけた者は無事で済むのだろうか。
そんな疑問が頭をよぎるが、それよりも先ず気になった事があり、それをアカリに問いかける。
「何をしている……という話よりも、どうやって話をここまで大きくする事が出来たんだ? ここまで話を広めるのに、1時間もかかっていないんだぞ」
アカリは丁寧に婦人達と会話しただけで、特別な何かをしたようには見えなかった。
それなのに、1つの話題で街を一体化させるなんていった馬鹿げた事を、1時間足らずでやってのけたのだ。
正直、街の人の安否なんぞより余程そちらの方が気になる。
「大した事じゃないわ。悪役令嬢としての知識を少しばかり利用しただけよ」
「そういえば、お前にはそんな設定がついてあったな。だが、今回の件と悪役令嬢の知識に共通点があるとは思えないが」
俺がそう話すと、アカリは少しばかり今回行った事についての話を始めてくれた。
「あの婦人さん達は、私が先程すれ違う際に、パンプキンさんの話をしていたわ。そこでパンプキンさんに興味がある事をしった。それに、元から婦人さん達は多くの人たちと交流がある事を知っていたの」
「それは、何処で知ったんだ?」
「先日、貴方が街を混乱の渦に招いている間の、避難場所でよ。婦人さん達が多くの人たちをまとめ上げている立場だと知っていたの」
「つまりは……何が言いたいんだ? 簡潔に話してくれ」
「簡単な事よ。何か噂や話を流すのならば、多くのコミュニティに属している人間に、興味を引くように話題を提供する事、そしてそこに、その者達の正義のような心を刺激する要素を入れておく。話を聞いて、実際に探す事をしない人もいるかもしれないけど、正義といった要素がある以上、自分が動かないまでも他者には話して置こうとするわ」
「その話の何処に、悪役令嬢としての知識が関係してくるんだ?」
「噂や話を流して主人公を追い詰める悪役令嬢なんて、腐るほどいるでしょ? まぁ悪役令嬢が流す話は、今回のように事実じゃなくて、嘘ばかりだけどね」




