第四十二話①
鳥の囀りと、腹正しい程眩しい太陽の光で目を覚ました。
どうやら気が付かぬうちに眠っていたみたいだ。
瞼を擦りながら下を見てみると、ちらほらと街を行き交う人々が見えてきた。
家主に文句を言われかねない為、早めにこの屋根から離れなければならないなと思い、アカリの方へ視線を向ける。
アカリは結局俺の膝を枕として使用したまま眠り続けたらしく、今も気持ちがよさそうに眠りについている。
一方俺の足は既に感覚が無くなってしまっており、これからくるであろう痺れに、恐怖を感じ始めていた。
「おい、早くここを退いて犯人を探すぞ。微力ながら、俺たちも手伝う話になったところだろ?」
「……わかってるわよ。わかってるから、もう少しだけ待ちなさい」
アカリはようやく目を覚ましたのか、小さな声でそう返事をしながら、重たそうな瞼を開く。
太陽の眩しさに驚くようなリアクションを見せた後、再び俺の膝の腕横になり始めた。
「ツッコミを入れるのも面倒だな…出来れば今直ぐにでもここを離れたいんだ。そろそろ人目につき始める時間帯だからな」
「わかったわよ……わかったから、一度私を降ろしてくれない? どうせ私1人では降りれないわけだしね」
面倒だが、屋根の上に登る際と同様に、俺がアカリを運ばなければならないのも事実だ。
ひとまず屋根から降りて、その後にアカリを起こす事にしよう。そうすれば、別に注目も浴びずに済むだろうからな。
「では降りるから掴まっていろ」
そう言って抱き抱えると、アカリは俺の服を軽く掴んで衝撃に備え始めた。
俺は下に人がいない事を確認した後、勢いよく飛び降りたわけだが、この時足が痺れている事を忘れてしまっていた。
着地した途端、アカリを抱えながら大きく転んでしまい、アカリを地面に転がしてしまう。
地面に転がった後のアカリを眺めて、何とも言えない焦りが込み上げてくる。
「……目は覚めたんじゃないか?」
「覚めたわよ……。代わりに貴方を永眠させてあげたくなったけど」
「……すまない」
ポジティブな考えに持って行こうとしたが、そうはいかなかったみたいで、アカリは静かに怒りを見せながらゆっくりと立ち上がる。
どうやら目は覚めたみたいだが、その代償として偉く機嫌を悪くさせてしまった。
――
「体が痛いわね。屋根の上で寝たからなのか、起きて早々に地面に投げ飛ばされたからか……どちらだと思う?」
「先程謝っただろ。もう掘り起こさないでくれ」
愛も変わらず怒りを見せるアカリと共に、カフェで朝食をとりながら、俺たちはこの後の行動について再び話を交わし合っていた。




