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第四十一話①

「ねぇマヤト。貴方、元いた世界の空を覚えているかしら?」

「勿論覚えている。……だが、この世界の空の景色に、記憶が上書きされているのも事実だ」


 こちらの世界と元いた世界の空の景色は似て非なるものだ。

 まず、こちらには月が存在しておらず、代わりにあらゆる形の星が見られる。

 今俺の視界に中心に入っている星の形なんて、ダイヤモンドのような形になっている。まるで絵本に出てくる夜空ほどに非現実的だ。

 

「私もマヤトと同じよ。十数年元の世界にいたわけだけど、いずれこちらの方が長い期間生きた事になって、元いた世界の事なんて忘れちゃうのかも知れないわね」

「それはそうだな。正直俺はそれで構わないがな。元の世界に戻るつもりもないし、こちらの世界で長々と生きてやるつもりだ」

「私は正直言えば、元の世界に帰れるのなら、帰りたいとも思うのよね。こちらの世界も嫌いじゃないけど、向こうには大切な友人たちがいるから」

「向こうに「は」というのが気に入らないな。こちらにもいるだろ? 俺という人間が」

「まぁ……いるにはいるわね。ただ、貴方も恋しいと思ったりはしないの? 友人だったり、家族だったり」

「俺は向こうの世界に未練など1つもないぞ。友人なんていなかったし、家族仲も良くはなかったからな。寧ろ俺は、ずっとこういう世界を望んでいたんだ。ようやく手にした世界、手放すつもりはないな」

「ふーん。まぁ好きにしたらいいわ。私も好きにするから」

「すまないが俺はお前を好きにさせるつもりはないぞ。帰ろうとしたタイミングを見計らって必ず邪魔をしてやる。俺の旅にお前は必要だからな」


 考えても見れば、こう言った話をするのは初めてだった事に気がついた。

 まだ会ってから何ヶ月も経っているわけでもないとはいえ、お互いの共通点である、転生者という話をしてこなかったのは珍しいだろう。


「何よそれ…。まぁ今後どうなるかはわからないけど、少なくともアイツらを見返すまではここにいるつもりだし、これからも仲良くやりましょ」

「ならばそう言った態度でせっしてくれ、いつも妙に高圧的だからな」

「貴方が変な事ばかりするのも原因でしょ。私だけのせいにはしないでほしいわ」

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